★あらすじ その昔、天竺から閻浮檀金(えんぶだごん)の一寸八分の仏像が渡来しました。当時の我が国は仏教の受容を巡っての崇仏・廃仏論争の真っ最中、仏像は廃仏派の物部氏によって難波の堀江へと打ち捨てられました。
後に、信濃国司の従者として都に上った本多善光がこの仏像を拾い上げて、信濃の国にお連れし、この仏像を本尊とする寺を建立しました。これが善光寺の縁起です。
善光寺はお血脈の御印というのを一分で売り出した。額(ひたい)にこの御印を押してもらえば、どんな大罪を犯した者も極楽往生できるという、けっこうな代物だ。罪深き者、罪もない老若男女もこの御印を押してもらいに続々と善光寺に押し寄せた。
むろん、まやかし物の御印ではなく、その効果は抜群で、御印を受けた者は皆、極楽浄土へと行ってしまい地獄は開店休業の状態となった。
三途の川の正塚の婆さん、懸衣の爺さんの収入はなく、鬼の金棒は供出させられて売っ払っらわれ、赤鬼は高価な虎の皮のパンツははけず、よれよれの越中ふんどしで我慢、やせ細った青鬼はさらに青くなった。
このままでは地獄の運営・経営が成り立たなくなり、失脚を免れないと危機感をつのらせた第?代閻魔大王は地獄内閣を招集する。
とにもかくにも極楽行きの「元を断たなきゃだめ」と会議は全員一致で、お血脈の御印を盗み出すこととなった。さて盗み出す泥棒の人選だ。古今東西の有名無名の泥棒の膨大なブラックリストのデ−タベースから地獄コンピュータがはじき出したのは、御存じ石川五右衛門だ。
すぐに五右衛門風呂でくつろいでいる五右衛門に召集がかかる。例のど派手な格好で閻魔大王のもとへ参じて、ことの重大さを聞いた五右衛門、いと容易(たやす)き御用と即座に返答し、久しぶりに娑婆へと戻る。
善光寺に忍び込んでお血脈の印を盗み出すくらい、朝飯前、赤子の手をひねるくらいの技だ。首尾よく御印を盗み出したが、やっぱり芝居ががりの大見えを切らないとおさまらないのが五右衛門だ。お血脈の御印を大上段に振りかざし、
五右衛門 「ありがてえ、かたじちけねえ。まんまと首尾よく善光寺の奥殿へ忍び込み奪い取ったるお血脈の印、これせえあれば大願成就」で、そのまま、極楽へ直行してしまった。
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