「酒の粕」


 
あらすじ 赤い顔をして与太郎さんがやって来た。
熊さん 「よお、どうした、そんなに赤い顔して」

与太郎 「酒の粕焼いて二枚も食った」

熊さん 「いい若えもんが酒の粕食ったなんて見っともねえ。自慢できる話じゃねえぞ。人に聞かれたらを飲んだといいな」

与太郎 「ああ、分った。酒飲んだと言やあいいんだな」

熊さん 「そうだその方が景気がよさそうだし、男らしいっていうもんだ」、与太郎さん今度は辰さんをつかまえて、
与太郎 「おい、辰さん、あたいの顔赤いだろ」

辰さん 「ああ、赤えな。酒粕でも食ったのか」

与太郎 「そうじゃねえよ。酒飲んだんだ」

辰さん 「へえ、そうか。ついこないだまで寝小便たれてると思っちゃいたが、もう酒が飲める一人前の男になったのか。今度、一緒に飲みに行こうじゃねえか。で、どのくらい飲んだんだ」

与太郎さん 「このくらい大きいのを二枚も飲んじまった」

辰さん 「なんでえ、やっぱり酒の粕じゃねえか」

与太郎さん 「分かるか」

辰さん 「それを言うなら、これくらいの武蔵野でグゥーと二杯やったと言ってみな」

与太郎 「武蔵野ってなんだ?」

辰さん 「武蔵野の野っ原は広くて、とても見つくせん。野見つくせんで、飲み尽くせんほどの大盃と言うことだ」

与太郎 「なるほど武蔵野でグゥーと飲んだか」

辰さん 「武蔵野はいいが、二枚はだめだぞ、二杯だぞ」

与太郎 「肴はどうするんだ」

辰さん 「そうさな、マグロのぶつ切りとほうれん草のおひたしぐれえにしときな」

与太郎さん次が来るのを待ち構えて、

与太郎 「やあ、寅さん、おれの顔赤いだろ」

寅さん 「おや、走ったのか、逆立ちで歩いて来たのか」

与太郎 「そうじゃねえやい。酒飲んだんだ」

寅さん 「ほう、えらいな。どのくらい飲んだんだ」

与太郎 「こんな大きな武蔵野で二杯飲んだ。肴はマグロのおひたしとほうれん草のぶつ切りだ」

寅さん 「おいおい、あんまり無茶すんなよ。そんな大きいもんで冷や酒は毒だぞ、お燗して飲んだのか?」

与太郎 「心配すんな、焼いて飲んだ」


  
        






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