「山号寺号」
★あらすじ 小僧をお供にして浅草の観音様にお参りに行く若旦那。幇間(たいこもち)の一八(いっぱち)に見つかり、遊びのお供にしてくれとしつこくつきまとわれる。
若旦那 「今日は浅草の観音様へお参りに行くから駄目だ」
一八 「偉い!お若いのに、浅草寺ですな」
若旦那 「観音様だよ」
一八 「ですから浅草寺、あれは金竜山浅草寺に安置し奉る観世音菩薩・・・」
若旦那 「別に間違ってねえじゃないか。観音様を拝みに行くんだから」
一八 「まあ、そうですが。金竜山浅草寺、これがあそこの山号寺号で・・・」
若旦那 「何だい、そのサンゴウジゴウてえのは?」
一八 「山の名と寺の名で、どこの寺にも必ずあるんで、成田山新勝寺ってなもんで・・・」
若旦那 「じゃあ寛永寺は」、「東叡山寛永寺」、「増上寺は」、「三縁山増上寺」、「池上本門寺は」
一八 「長栄山大国院本門寺、みんなあるんですよ、定額山善光寺、高野山金剛峰寺、比叡山延暦寺・・・・どこにもあるんですよ」
若旦那 「よし、どこにもあるんだな、ここは下谷の黒門町、ここにもあるか。さあ探せ、探しゃあ、褒美に一円やらあ、なきゃ首だ、出入り差し止めだ」で、一八は一円か首かで必死に探し始める。
一八 「あそこに車屋さんが客待ちしてますでしょ。”車屋さん広小路”でどうです」、
若旦那 「うん、なるほど、一円やらぁ」
一八 「あそこの家の前で、”おかみさん掃き掃除”」、「隣はお医者さんで、”お医者さんいぼ痔”」
若旦那 「汚いのはだめだ」 向いから按摩さんがやって来て、
一八 「按摩さん揉み療治」、通りの店が「蕎麦屋さん玉子とじ、時計屋さん今何時、床屋さん耳掃除・・・・」、調子に乗った一八は次から次へ山号寺号を繰り出し、若旦那から一円をせしめて行く。
おかげで懐(ふところ)がすっからかんになってしまった若旦那「もう、いいよ」
一八 「おかげ様で、懐が暖(あった)かくなりまして・・・・」
若旦那 「どうだい、今度ぁ俺が一つやろう」
一八 「おや、若旦那が伺いましょう」と余裕しゃくしゃく。
若旦那 「今、お前にやった金、ちょいとこっちに貸しな」
一八 「いいですけれど、これはもうあたしのお金ですから・・・」
若旦那 「うるさい分かってるよ、いいか、この金をこう懐に入れてね、グイと尻を端折ってね」
一八 「若旦那の山号寺号は手数がかかりますな」
若旦那 「こうしておいて一目散(山)随徳寺」
一八 「あぁー、南無山仕損じ」」
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浅草金竜山朝の雪(広重)
「浅草寺」
*黒門町は、台東区に元黒門町・東黒門町・西黒門町があった。
東と西の黒門町は江戸時代には新黒門町といった。今でも旧西黒門町に黒門小学校(上野一丁目)がある。
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★立川談志の『山号寺号』【YouTube】
成田山新勝寺総門
東叡山寛永寺旧本坊表門 「説明板」
三縁山広度院増上寺
長栄山大国院本門寺 此経難持(しきょうなんじ)坂
「法華経」宝塔品の偈文(げぶん)の文頭の文字をとって坂名にした。
石段は加藤清正が寄進したものと伝える。
定額山善光寺駒返り橋 「説明板」
高野山金剛峰寺奥の院
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