「佐々木政談」


 
あらすじ 江戸南町奉行佐々木信濃守が、お忍びで市中を見回っていると新橋の竹川町子供たちが、お奉行ごっこ、お白州ごっこで遊んでいる。立ち止まって見ているとなんと奉行役の子どもは佐々木信濃守と名乗った。お調べは「一から十まで、がそろっているか」でもめた喧嘩口論の裁きだ。

 佐々木信濃守ジュニアは「さような些細なことをもって、上に手数をわずらわすは不届きである」と、喧嘩両名を諌めてから、「一から十まで、はみなそろっておる」、「だって、十つとは申しません」、「黙れ、奉行の申すことに偽りはない。中で一つ、を盗んでいる者がある。いつつのつを取って十に付けると、みなそろう」と、なかなかの頓智頓才ぶりで一件落着と相成った。

 見ていた佐々木信濃守は感心し、奉行役の子どもと親を町役人付き添いの上、奉行所に出頭させるよう供の者に申しつける。お奉行ごっこで本物の奉行を邪魔だと竹の棒で追い払ったらしいと町内は大騒ぎだ。一方、奉行役の子供は桶屋高田綱五郎のせがれの十三歳になる四郎吉で、綱五郎は突然の奉行所からの呼び出しにびっくりで真っ青だが、四郎吉はいつもと相変わらず、平気の平左でしゃあしゃあとしている。

 四郎吉父子は家主と町役人付き添いで南町奉行所へ出頭する。
奉行 「これ四郎吉、これから奉行の言う事に答えられるか」

四郎吉 「お白州の砂利の上では位負けがする。そこに並んで座れば、何でも答えられる」と、奉行の隣に対等に並んだ。

奉行 「空のの数が分かるか」

四郎吉 「このお白州のの数が分かりますか」

奉行は三方に饅頭を乗せ食べてもよいと差出すと、四郎吉はパクついて、おっ母の買ってくれる饅頭よりよっぽど美味いとほおばっている。
奉行 「父親は何をくれる?」

四郎吉 「小言ばかりくれます」

奉行 「饅頭を買ってくれる母親と、いつも小言をくれる父親とどちらが好きか?」

四郎吉 「二つに割った饅頭、どちらが美味いと思いますか?」で、また一本取られた。

奉行 「四角くても三方とは?」

四郎吉 「一人でも与力と言うが如し」

奉行 「では、与力の身分を存じておるか?」

四郎吉は懐(ふところ)から起き上り小法師を取り出して、「これです。身分は軽いが、御上のご威光を笠に着てピンシャンピンシャンとそっくり返っています。そのくせ踏んだらじきにつぶれる、腰の弱い者です」、いきなり横っ面を引っぱたかれたようで与力たちは下を向いてしまった。

奉行 「それでは与力の心はどうか」

四郎吉は天保銭を借りて、起き上り小法師にくくりつけて放り出した。「銭のある方に傾きます」、とんだすっぱ抜きを喰らって与力たちは青くなったり、赤くなったりまるで七面鳥だ。

奉行 「衝立に描かれた仙人が何を話しているか聞いて参れ」

四郎吉 「へい、聞いてまいりました、佐々木信濃守は馬鹿だと言ってます。絵に描いてあるものが物を言うはずがないって」、四郎吉に何本も取られあげくの果ては馬鹿呼ばわりされた佐々木信濃守は大笑い。

四郎吉が十五になると近習に取り立てたという、「佐々木政談」の一席。




        
起き上がり小法師(会津若松市)


 *新橋竹川町は中央区銀座7丁目《地図》 銀座に桶屋の高田屋綱五郎一家が住んでいたのだ。


三遊亭圓生の『佐々木政談【YouTube】

   南町奉行所跡(千代田区有楽町2-8・2-9)

JR有楽町駅南東側のマリオンとその北側あたり。
   お白州跡(世田谷代官屋敷)
 《地図






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