★あらすじ★ 船場の大家の若旦那が原因不明の病気になる。大坂一という名医の見立てによると気の病だという。番頭がなんとか聞きだそうとすると、若旦那は欲しいものがあるという。
恋わずらいか嫁さんでも欲しくなったのかと思いきや、
若旦那 「・・・実はみかんが食べたいんや」
番頭 「どんな裏長屋の小せがれかて、みかん食べたいいうて、死ぬほど患う人がおますかいな。まかしときなはれ、みかんを買うてきて部屋中みかん詰めにしますよって」と、安請け合いをする。
番頭から話を聞いた大旦那は、この暑い土用の最中にどこにみかんがあるのかと番頭を問い詰め、もし、みかんが手に入らずせがれががっかりして死んだら、おまえは主殺しの下手人で、訴えれば町内引き回しの上、逆さ磔(はりつけ)だと番頭をおどし、大坂中みかんを探しに回って必ず買って来いと番頭に言いつける。
番頭は暑い中をみかんを探しにあちこちの八百屋を回り始めるが行く先々の店で馬鹿にされ、邪魔にされむろん1個のみかんも見つからない。
ある店で天満のみかん問屋に行ってみろと教えられる。みかん問屋に行くと蔵に囲って保存してあるみかんを出してくれるがどれも腐っていてまともなみかんは出てこない。やっと一つ無傷のみかんが見つかる。番頭は喜んで売ってくれと頼み二分差し出す。
すると、みかん問屋は二分や一両では売れないと言い、番頭になぜ今頃みかんがいるのか聞く。番頭が事情を話すと、みかん問屋は金は要らないからみかんを持って帰って若旦那に食べさせてくれという。
番頭はただでは気がすまない、船場では名の知れた商家だから、値段の高いのは承知だから遠慮なしに言ってくれといい押問答になる。ついに、みかん問屋はそれでは買ってもらおう、値段は千両だという。
いくらなんでもみかん1個で千両は高すぎると、やけくそ気分の磔覚悟で番頭は店に戻る。
大旦那 「安い!せがれの命がたったの千両で買えるなら安いもんや」、言うて千両箱を出して早く買ってこいと番頭を追い立てる。
千両で買って来たみかんを番頭は若旦那の前へ出す。皮をむくとちょうど10袋で、一袋100両の勘定だ。若旦那は喜んで食べ始める。7袋食べたところで、両親に1袋づつ、番頭に1袋食べてくれといって差し出す。
番頭は有難くみかんを3袋持って廊下に出たが、みかんを見て考え込んでしまう。13の時から奉公して来年あたり、暖簾(のれん)分けの時にもらう金が50両、とても80両の金は出してもらえない。このみかんは300両。
「ええままよ」と番頭、みかん3袋持ったまま、ドロンしてしもた。
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