★あらすじ 伊勢屋の小僧の定吉が旦那の手紙を平河町の平林(ひらばやし)さんへ届ける用事をいいつかる。忘れっぽく、字の読めない定吉に、旦那は、「ずぅ〜と、ヒラバヤシさん、ヒラバヤシさんと、口の中で言って行きなさい」と智恵を授ける。
定吉は、「ヒラバヤシさん、ヒラバヤシさん」と言いながら歩いていて、うっかり赤信号で横断歩道を渡りそうになり、お巡りさんから、「赤止まりの青歩き」だと注意され、いつの間にか、「赤止まりの青歩き」と言いながら歩いていたが、どうもこんな名前じゃなかったと気づいて、通りかがかりの人に手紙の宛名を読んでもらうと「タイラバヤシだ」と言う。
「タイラバヤシ、タイラバヤシ」と言いながら歩いて行くが、何となく違っているようで不安で、また人に聞くと、「ヒラリン」という答えで、「ヒラリン、ヒラリン」だが、また心配になってお爺さんに聞くと、「イチハチジュウのモクモクじゃ」で、だんだん正解からは遠ざかって行く感じだ。
今度はたばこ屋で聞くと、「ヒトツとヤッツでトッキッキ」だと。何だかおちょくられているみたいだが、定吉はもう面倒くさいと全部続けて、「♪タイラバヤシかヒラリンか、イチハチジュウのモクモク、ヒトツとヤッツでトッキッキ」と節をつけて歩き出した。面白がって近所の子供たちが後にぞろぞろ付きだし、定吉は泣きべそをかきながら、「♪タイラバヤシかヒラリンか・・・・」と歩いている。
ちょうど通り掛かった定吉を知っている人が、「どうしたんだ。お使いに行って行き先が分からなくなったのか。しょうがないな。その手紙はどこに届けるんだ」
定吉 「ヒラバヤシさんとこです」
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