「粗忽長屋」

 
あらすじ 同じ長屋に住むそそっかしい八五郎と熊五郎は隣同士で兄弟分。ある日、八五郎は浅草観音に参り、雷門を出た所で黒山の人だかりにぶつかる。

 大勢の野次馬の股ぐらの間をくぐって見ると、これが行き倒れで、菰(こも)をめくって見ると熊五郎だ。「熊の野郎、今朝寄った時にはぼんやりしていて、ここで行き倒れているのも気がつかねえんだ」と、世話人が「この人は昨日の夜からここに倒れているんだ」と言っても納得しない。

 ついには本人をここに連れて来て死骸を見せて引き取らせると言い出し、世話人の言うことも聞かずに、長屋の熊五郎の家に行く。

 熊五郎にお前は昨日、浅草で死んでいるというが、熊は死んだ心持ちがしないという。昨夜のことを聞くと仲(吉原をひやかし、馬道で飲んで酔っ払い、その先はどうやって長屋に帰ったか分からないという。

八さん 「お前はそそっかしいから悪い酒に当たって死んだのも気づかずに帰って来ちまったんだ」

熊さん 「そう言われてみると、今朝はどうも気持ちがよくねえ」

 八五郎は半信半疑の熊さんを引っ張って死骸を引き取りに現場に戻る。野次馬をかき分けて、

八さん 「おう、ごめんよ、ごめんよ、行き倒れの本人を連れて来たんだ、どいてくれ、どいてくれ」、行き倒れを見て

熊さん 「ああ俺だ、なんて浅ましい姿になっっちまったんだ」、なんて調子だ。あきれ返る世話人を尻目に八さんは本人が引き取って行くと言って熊さんに死骸を抱かせる。

熊さん 「兄貴、わからねえことが出来ちまった」

八さん 「何が」

熊さん 「抱かれているのは確かに俺だが、抱いてる俺は誰だろう」



この下に行き倒れの熊五郎?が・・・


柳家小さんの『粗忽長屋【YouTube】


雷門
浅草寺」・「雷神門」(「江戸土産」・広重画)



馬道通り(左右)の二天門前交差点


114


表紙へ 演目表へ 次頁へ
アクセスカウンター