「宗漢」


 
あらすじ ある山里の村医者の前田宗漢先生。名前はいっぱしの名医のようだが薮医者で、もとは町医者だったが診てもらいに来る患者もなくなり、食い詰めてこの村にやって来たという次第。

 今は書生も置けなくなり、女房と二人で診療所をやっている。藪とはいえ、村にはただ一軒の医者で村人も宗漢先生を頼るしかない。先生はずぼらというか、人が良す過ぎるのか、診療代の代わりに大根やら人参でも診てやっているので、暮らしぶりは一向に良くならずにおかみさんも苦労が絶えない。

 ある日、山向こうの近江屋という大店から、お嬢さんの病を診てもらいたいと使いが来た。あちこちの医者に診てもらったが何の病気か分からず、仕方なく宗漢先生を頼って来たのだろう。

 見栄っ張りの宗漢先生、女房を男の身なりに、頬かむりをさせてお供とし、自分はたった一本のフンドシを洗ってしまったので、フルチンで山を越えて近江屋へ向かった。

 早速、お嬢さんを診ても何の病気か分かるはずもないが、おかしな話などを聞かせているうちにお嬢さんの顔が少しは明るくなって来たようだ。

 様子を聞いた近江屋の主人は礼を言って、二人を酒・肴でもてなしていると、雨風が激しくなってきた。
主人 「この嵐の中、山を越えるのは危のうございます。どうか是非とも手前どもにお泊りください」

宗漢 「それは有難いお申し出じゃが、何せ大勢の村人がわしの診察を待っている次第で帰れねば・・・」と、すっかり酔ってはいるが見栄を張るのを忘れないのが宗漢先生。後ろでお供の男装した女房が袖を引っ張り、泊って行くようにと促す。

宗漢 「そうですか、それではお言葉に甘えまして今夜はここへお世話になります」ということになったが、あいにく今夜は先客やら得意先の商人などで客間には空きがなく、客用の布団もないという。仕方なく先生は主人のせがれの子どもと、男と思われている女房は飯炊きの権助と一緒に寝るハメになった。

 翌朝は好天で先生とお供は朝飯も食わずに近江屋を出て行った。一方、近江屋では大勢で朝飯の真っ最中だ。
せがれ 「昨日の先生はえらく貧乏しているようで、フンドシ締めてなかったよ」

権助 「なあに、お供さんはキンタマがなかっただ」





        




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