「宗論」  

 
★あらすじ
 すべて、世の中のものには陰陽があり、男と女、宗旨にも陰陽がある。「南無阿弥陀仏」は陰で、「南無妙法蓮華経」は陽だ。

 ある店の旦那。家の宗旨は浄土真宗なのに息子キリスト教に凝ってしまい面白くない。息子は今日も朝から教会へ行ってしまう。番頭は若旦那は博打で金を湯水のごとく使っているわけでも、女狂いをしているのでもないので、とがめだてしないでくださいと言うが、旦那はおさまらない。今日こそはみっちりと小言を言ってやろうと待ち構えている。

 しばらくすると息子が帰ってきて口論となる。
旦那 「この忙しい時に、店をうっちゃっておいてどこをうろついていたんだ」

息子 「はい、お父様、無断で外出したことはお詫びいたします。今日は関西からピース様というえらい牧師様がお見えになりましたのでお話を聞きにまいりました」

旦那 「お前には浄土真宗というありがたい教が伝わっているんだから、なんで阿弥陀様に手を合わせてくれないんだ」

息子 「お父様のお言葉ではございますが、私も今までは真の神のあることを知らず、お父様のごとく偶像仏を信じていたであります」

旦那 「なんだその偶像仏てえのは?お前の信じる神様てえのはどこがそんなにありがてえんだ」

息子 「我が天の神は私の造り主であります」

旦那 「馬鹿言っちゃいけないよ。お前を作ったのは、あたしと死んだ婆さんの二人だけだ。人の手など借りやしない」

息子 「肉体を作ったのは両親ですが、知力、能力、魂を造られましたのはのは天の神様であります」

旦那 「それならお前は、あたしと、婆さんと、キリストが三角関係だったというのか」

息子 「お父様、そんなに興奮されては困ります。そもそも、イエ〜ス・キリストと言えるお方は遠きユダヤの国、処女の腹に宿られ馬小屋において産声をあげられました。時の人民はこれぞ真の神であると、・・・哀れなる人民を救い給えと言ったであります。・・・十字架に架けられます。その時、イエ〜ス・キリストは天に向かって、我を十字架に架けし者の罪を許したまえと言ったであります。お父様、信じてください。信ずるものはみな救われるのであります。お父様目覚めてください」

旦那 「目覚めているよおれは、これより目覚めようがねえんだよ。ほんとに怒ってんだから」

息子 ♪「十字架に架かりて・・・恵み給え〜、ご町内の皆さま、今晩八時から・・・」

旦那 「なにが今晩八時だ、この馬鹿ったれが・・・」、ついに旦那が手を上げてあわやというところに、飯炊きの権助が飛び込んでくる。

権助 「まあまあ、手を下ろしてくだせえ。・・・宗論はどちら負けても釈迦の恥といいやす。今日のところはこの飯炊きの権助に免じて勘弁してやっておくれやす」

旦那 「お前もその教えを知っているところを見るとお前も真宗だろう。」

権助 「おらぁ、仙台だから奥州でがす」


      

柳家小三治の『宗論【YouTube】

    


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