★あらすじ 医者に見放された、おふくろと二人暮らしの俄かめくらの木彫師の定次郎。今日は赤坂の円通寺の日朝さまに二十一日のお参りの満願の日。
お灯明のろうそくが目の奥にうっすら映るようにようになり、今日こそ目が開くと一生懸命「南無妙法蓮華経」を唱える。すると隣にお題目を唱える婦人の声。気にかかり、話しかけ、女の境遇などを聞き邪念が入ったせいか、見えかけていた目が真っ暗になってしまう。
定次郎 「ちくしょう、日朝坊主めやきもちもいい加減にしろ」と、毒づいてやけ気分で、世話になっている石田の旦那のところへ行く。旦那はそれなら、上野の清水観音へ100日、それでもだめなら200、300日とお参りするように定次郎にすすめる。
今日は定次郎が、せっせと一日もかかさず清水観音にお参りした100日目だ。目の開くのを期待して、お祈りをするがどうしても目は開かない。また短気を起こして、
定次郎 「やい、よくも百日も賽銭ただ取しやがったな。このいかさま、泥棒観音」と、悪態、毒づくありさまだ。そこへ石田の旦那が様子を見に来て、100日でだめなら200日、300日でもお参りをしろと言い聞かせる。
一緒に池之端の弁天様をお参りし帰る途中、急に激しい雨と雷。定次郎は気を失って倒れてしまう。気がつくとびっしょりで寒い。体を拭いたりしているうちに、ふと自分の目が開いていることに気づく。
定次郎 「あっ、開いた、開いた、目が開いた!」、観音様の方へ向って手を合わせ、深々と頭を下げる。
翌朝、おふくろを連れて清水観音へお礼参り。
「目のない方に目ができましたというお目出度いお話でございます」
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