「高砂や」


 
あらすじ 伊勢屋の若旦那と大工の棟梁の娘との恋の橋渡し、仲を取り持った熊さんが婚礼の仲人を頼まれた。熊さんは横町の隠居のところへ相談に行く。
隠居 「お前が仲人かい。それは目出度い。で、婚礼はいつだい?」

熊さん 「それが今晩で。かかあは紋付を着て、袴をはかなきゃいけない。隠居のとこで借りて来い。どうせ碌なものじゃねえだろうが、ないよりはましだってんで、借りに来た」

隠居 「呆れた物の頼みようだが、目出度い話だし貸してやろう」と、まず一件は落着。

隠居 「婚礼が終わってお開きの時、ご祝儀をやらなきゃいけない」

熊さん 「ご祝儀もらうんでしょ?」

隠居 「欲張っちゃいけないよ。お前がやるんだよ」

熊さん 「いくらほど包みゃあいいんで?」

隠居 「その祝儀ではない。高砂やをやるんだ」

熊さん 「ああ、高砂やね」

隠居 「知ってるのか?」

熊さん 「知らねえな」

隠居 「高砂やこの浦舟に帆を上げて、月もろともににで潮の・・・、だが婚礼の席で出るはいけないから、潮の・・・・・早や、住吉(すみのえ)に着きにけりだが、お前にはここまでは無理だから、・・・この浦舟に帆を上げて、ぐらいまでやりなさい。あとの方はご親戚の方におまかせする」

 隠居は親切にも稽古をつけてくれる。「♪たあかぁさぁごやぁ~このうらふねに~ほをあげてぇ~・・・」、おかしくて笑っている熊さんに、「お前のため、お前が恥を掻かないようやってるのに笑うやつがあるか。やって見ろ」

 まことにごもっともで、熊さんは挑戦するが、「たか、たか、かた、かた、かた・・・」、啄木鳥が木をつついているようになったり、都都逸風になったり、突然、大声を張り上げて婆さんがびっくりして表へ飛び出しそうになったり、「えぇー高砂、高砂~、柴又は乗り換え~」、帝釈天へ寅さんに会いに行くんじゃないのだが。

 困った隠居は、「豆腐屋売り声のような調子やってみな」
熊さん 「♪とぉふい~高砂やぁ~・・・」、少しはましになったのか、匙を投げたのか隠居、「しょうがねえや、こらどうも。・・・まあ、そんな調子で、うまくごまかしなさい」で、特訓は終わった。

 婚礼も滞りなく進み、「お仲人様、今晩はご苦労さまでございます。お開きにいたしますので、恐れ入りますが、どうか一つご祝儀を」、婚礼中はかみさんが上手く立ち回って、熊さんは恥を掻くこともなかったが、出番がないのも手持ち無沙汰で、待ってましたとばかり熊さんは立ち上がって、「♪とぉふい~高砂やぁ~この浦舟に帆を上げて」までは何とか漕ぎつけた。

熊さん 「あとはご親類の方々で」

親類 「親類一同、不調法でございます。続いて後をお願いいたします」、さあ、大変目論見がはずれて、
熊さん 「♪高砂や~高砂や~・・・帆を上げて、帆を上げて・・・」

親類 「帆を上げっぱなしでは困りますが」

熊さん 「・・・帆を下げて・・・」

親類 「さ、さ、さ、下げちゃ駄目ですよ」、すっかり泣き声になって、

熊さん 「高砂や~、この浦舟に・・・助け舟ぇ~」



 ★サゲには、「高砂や」の節が巡礼の御詠歌の節のようになってしまい、親類一同が「婚礼にご容赦」(巡礼にご報謝)というのもある。今では家の前に立って御詠歌を歌って喜捨を乞う巡礼・遍路などはいなくなって、このサゲは分かりにくくなっているだろう。







尉と姥の像(宝殿駅前(JR山陽本線)) 「説明板
ここは高砂市で、「♪高砂や~」の発祥地。『山陽道


        




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