「たけのこ」

 
あらすじ ある武家の屋敷。
武士 「これ可内(べくない)、きょうのおかずは何じゃ」

可内 「たけのこ(竹の子・筍)でございます」

武士 「珍味じゃが、いずこよりの到来物か、八百屋で買い求めたものか」

可内 「ご隣家のたけのこが、こちらの庭に出ましたんで堀出しました」

武士「何と、渇しても盗泉の水は飲まずとは古人の戒め。何という事をいたすのか」、と咎めだてはしたものの、この武士はたけのこが大の好物。

武士 「隣家へ行って、不埒にもご当家様のたけのこが、わが家の庭に忍び込みました故、無礼千万と手討ちにいたしましたと、申して参れ。わしは鰹節のダシを取っておくから」、可内が隣家へ行ってこの口上を述べると、

隣家の主人 「相分かった。不届き至極なたけのこ、お手討ちはやむなきところだが、遺骸はこちらへお下げ渡しを・・・」

可内 「あの、うちの旦那、かつおのだし、炊いて待っとりまんので」

隣家の主人 「だし諸共にても一向に苦しゅうない」、戻った可内がいきさつを話すと、

武士 「ほう、死骸を引き渡せとな。ダシ諸共でも苦しゅうないか。・・・可内、もう一度行ってまいれ。不埒なたけのこめは、すでに当方にて手討ちにいたしました。死骸は当方にて手厚く、腹(原)のうちに葬り、骨(こつ)は明朝、高野)に納まるでございましょう。これはたけのこの形見でございますと言うて、この竹の皮をばらまいて来い」、再度、隣家へ行った可内に、

隣家の主人 「ああ、可内、かつおのダシも持って参ったか」

可内 「いや、そうやおまへんので。・・・・これはたけのこの形見でございます」と、皮をバラバラバラー、

隣家の主人 「うーむ、もはやお手討ちに相成ったか。・・・・可哀や。かわ(皮)いや(皮嫌や)」


 
   
  





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