「短命」

 
あらすじ  植木職人の八五郎が先代から出入りしている伊勢屋一人娘婿養子が続けて3人死んだ。八五郎はなぜだろうと不思議に思って横町の隠居の所に聞き来た。

 隠居は伊勢屋の店の様子と夫婦仲を聞く。店は番頭がすべて切り盛りし何の心配もなく、3人の婿養子との夫婦仲は睦まじいのを通り越して、夫婦はいつもべったりで、はたから見ているのが恥ずかしくなるほどの仲の良さだったという。

 これを聞いた隠居、「夫婦仲がよくて、家にいる時も二人きり、ご飯を食べる時もさし向かい。原因はそれだな」と一人で合点だが、八五郎には何のことやらさっぱり分からない。

隠居 「店の方は番頭任せで財産もある。朝から二人きりで美味くて、栄養満点で、精がつく物ばかり食べて、女が美人で暇があるってのは短命のもとだ」と言っても、八五郎は「じゃあ、いい女だと、旦那は短命なんで?」といい所をつくが、まだ核心は頭の闇の中だ。

 物分りの鈍い八五郎にいい加減疲れて来た隠居は、「早い話、冬なんぞはこたつに入る。そのうちに手と手がこう触れ合う。白魚を五本並べたような、透き通るようなおかみさんの手。顔を見れば、ふるいつきたくなるいい女。そのうち指先ではすまず、すぅ〜と別の所に指が触ってな・・・・なるほど、これでは短命にもなるというもの」と語るのが恥ずかしくなるほどの、エロ本まがいの情景描写で話す。これをエスカレートして繰り返すこと三度で、やっとニヤニヤ、助平の八五郎も大納得した。

 長屋に戻ると相撲取りのような女房が鬼のような顔をして、「朝っぱらからどこをほっつき回っていたんだ、早く飯を食え」と怒鳴る。

 ふと隠居の話を思い出した八五郎、「おい、夫婦じゃねえか。飯をよそってくれ。おい、そこに放りだしちゃいけねえ。俺に手渡してもれぇてぇんだ」、何を今さらと仏頂面で茶碗を邪険に突き出したかみさんの指と指が触れて、

八五郎 「顔を見るとふるいつきたくなるようないい女・・・・ああぁ、俺は長命だ」



     


立川志らくの『短命【YouTube】


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