★あらすじ 町内の若い衆が寄り集まって吉原へ繰り込もうという相談が始まる。昨夜、隣町の連中が、吉原で芸者を総揚げして大騒ぎをしたあげく、緋縮緬の長襦袢一丁でかっぽれの総踊りをやらかし「隣町のやつらはしみったれで、こんな派手なまねはできめえ」と言って帰ったという噂を耳にし、こっちも負けないでおつな趣向で見返してやろうと息巻く。
あれこれ相談の末、向こうが緋縮緬ならこちらはもっと豪華な錦の褌(ふんどし)をお揃いでこしらへ、仲(吉原)へ繰り込んで、お引けの時に裸の総踊りと洒落れこもうということになる。
連中は質屋の質流れの錦で褌に仕立てるが、一人分足りない。少し足りない与太郎があぶれそうになった。仲間外れになるのはいやだし、吉原にも行きたい与太郎さん、鬼よりこわいおかみさんにうかがいを立て、仲間のつき合いだというのでやっと許してもらったはいいが、肝心の錦の算段がつかない。
与太郎さんと違い頭の回転の早く、知恵が浮かぶおかみさんは、寺の和尚に「親類の娘に狐が憑(つ)いたが、錦の袈裟を掛けてやると落ちるというから、一晩だけぜひ貸してくれ」と頼み込めと入れ知恵する。
早速、寺へ行った与太郎さん、翌朝には必ず返すと約束して借り受け、無事、女郎買いの仲間入りが出来た。予定通りその晩はどんちゃん騒ぎ。
お引け前になって、一斉に錦の褌一つになり、裸踊りを始めたから廓の連中はびっくり。中でも一際目立つのが与太郎さんだ、錦の袈裟も一段と立派だが、それに白い輪もついている逸品だ。
女将は「あの連中はどこかの大名家の隠れ遊びで、袈裟に輪があるのが殿様で、あの輪は小用の時、手が汚れるといけないから、チンをくぐぐらせて固定するチン輪だ」というチン説をまことしやかに披露し、花魁たちもなるほどと納得、その夜は与太郎さんだけが大もて、家来どもはすっかり振られてしまた。
翌朝、振られて面白くない家来連中が与太郎の部屋に行くと、まだ花魁と布団の中、「早く、起きろ」に、「起きたいけど花魁が起こしてくれない」とのろけられ、踏んだり蹴ったりだ。
花魁も「うるさいよ家来ども。お下がり。ふふん、この輪なし野郎」で、頭に来た連中が与太郎さんを寝床から引きずり出そうとすると、花魁がしがみついて放さない。
与太郎 「花魁、起こしておくれよ」
花魁 「どうしてもおまえさんは、今朝帰さないよ」
与太郎 「えぇ、袈裟(今朝)返さねえとお寺で小言(こごと)食う」
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