「狸の化寺」

 
あらすじ ある村の庄屋から、大雨で切れた狐川の堤を修繕してもらいたいとの依頼を受けた黒鍬組の一行が頭領の火の玉竜五郎を先頭に総勢三十人で村に到着した。大きな宿はなく、竜五郎はめんどうな事が起こらないよう一同全員が入れる寺などへ泊めてくれという。

 寺はあるが無住の荒れ寺で、化け物が出るという。竜五郎「化け物が出ると聞いて泊まらんのは怖気づいたと思われて火の玉の名前にかかわる。是非そこへ泊めてくれ。化け物を退治できなくとも、正体ぐらいは見破ってやる」と、一行は寺へ乗り込む。

 荒れ放題の寺も、黒鍬組の手にかかればあっという間に見違えるように綺麗になった。風呂を沸かし、飯を炊き、本堂で飲んで食った一同、あとは明日からの土木作業に備えて寝るばかりとなった。

 竜五郎が化け物の見張りの、寝ずの番をしようとすると、手下が、「頭領はわしらが化け物に食われてる間に一人で逃げる腹やで・・・頭(かしら)、わたいらが起きてますよって、どうぞ寝てくれなはれ」で、竜五郎は、「そうか、頼むぜ」で、大いびきをかいて寝てしまった。手下はその気持ちよさそうな様を見て、「やっぱり代わってください」と、勝手なことを言っている。

 夜も更けてくるとさすがの火の玉の竜五郎でもコクリ、コクリと眠気が襲って来る。すると祭壇の後ろから頭は姉さんかぶり、紺絣(かすり)の着物で、手には花篭を下げたしのぶ売りのような格好をした娘が現れ、「おーい、竜五郎さん」と、踊りながらそばへ来たかと思うと、グルッと目え向いて「噛もか!」と飛び掛かってきた。竜五郎は抜き打ちで切り払うと、何やら黒い獣のような物が、阿弥陀はんの陰へ逃げ込んだ。

 騒ぎで起きた手下どもと捜すが見当たらない。だが、じっくり見ていくと三体だった阿弥陀はんが四体になっている。この中から化け物をあぶり出そうと、カンテキに火をつけて松葉でいぶり出すと、「ヘーックション」と、一体が本性を現し飛び出した。大狸だ。

 みんなが追い詰めると大狸は天井に駆け上がって、欄間に彫られた天女に化けた。目を凝らして見ていると、一人の天女がギョロッと横目を使った。「あいつや!」、棒で突きかかると、天女全員が欄間から抜け出して、一同の頭上で舞い始めた。

 どれが狸やら、みんな茫然と見ていると、その中の一人が流れるように舞いながら、

「ああ、がすれる、金がすれる」


 

  荒れ寺

 
狐川:天正の山崎の合戦の頃は桂川・宇治川・木津川は淀付近で合流し、山崎付近の川幅は現在の半分ほどで、ここに「狐の渡し」があったということですから、このあたりに狐川が流れていたのでしょう。『米朝ばなし』より



勝竜寺城跡公園 細川ガラシャ、細川忠興ゆかりの城。
山崎の合戦では明智光秀が本陣を構えた地でもある。
西国街道➀



観音寺(山崎聖天)仁王門 《地図》 「説明板



聖天堂
ここは山崎の合戦の天王山(270m)の中腹。






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