「辰巳の辻占」


 
あらすじ 辰巳岡場所の女郎のお玉に入れ揚げ、お玉も自分にべた惚れと逆上(のぼ)せ上がっている道楽者の伊之おじさんに呼ばれる。伊之に金の無心をするというお玉を、「傾城の恋は誠の恋ならで 金もって来いが本のこいなり」と. 怪しんだおじさんは、お玉の本心を探る芝居をしてみろと知恵を授ける。伊之がつまらないことから友達と喧嘩になり殺してしまい、生きていられなくなったので川へ身を投げるという筋書きだ。おじさんはこれを聞いたお玉が一緒に死のうとでも言ったのなら、伊之の親父に話して二人を添わせてやろうと言う。

 お玉の真心を信じて疑わない能天気な伊之は早速、辰巳のお茶屋へお玉を呼び出す。二階の部屋で待っていると、辻占の巻煎餅が残っている。食べながら辻占を開けてみると、「端(はな)はさほどに思わぬけれど 今でもさほどに思わない」、「あたしの方からあなたのお手へ 書いてやりたい離縁状」、三度目の正直と、「年季(ねん)が明けたらお前の元へ きっと行きます断りに」でがっくり。

 そこへやって来たお玉は無心した金を持って来てくれたものと思っている。しょんぼりしたフリで座っている伊之は、人を殺してしまったから、大川に身を投げて死ぬつもりだと芝居を始める。「あ、そう、死んでおしまいなさい」と平然としていたお玉も何を考えたのか、あたしも一緒に死んであげると言い出した。

 行きがかり上、成り行きまかせで二人は手に手を取って大川へ、えせ心中の道行きだ。「南無阿弥陀仏、ひのふのみい」をきっかけに身を投げようとするが、お互い顔を見合わせてしまい飛び込めないでいる。お玉はなんとか伊之を先に飛び込ませようと少し離れて木蔭に隠れ、石を拾い「南無阿弥陀仏、ひのふのみい」で石をドボーンと投げた。本当にお玉が身を投げたと思った伊之は助けようと飛び込むと思いきや、「えらいことになった。おじさんの所へ行って相談して来るから」と、自分の身代りにと石をドボーンと放り込んでとんずらして、羽織が置いてあるお茶屋へ向かった。
一方、土手の木の陰でドボーンと聞いたお玉は「馬鹿だねぇ、本当に飛び込んだよ、ああせいせいした」と、お茶屋へと引き返す。
お茶屋の前でばったり出くわした二人。
伊之 「あっ!お玉」

お玉 「あら伊之さん しばらく」

伊之 「この野郎、なにがしばらくだ」

お玉 「だってお前さん、娑婆で会ったきりじゃないか」



「心中物」(小西酒造)から 
                                                                           


春風亭小朝の『辰巳の辻占【YouTube】





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