「鉄拐」


 
あらすじ 上海の大貿易商、上海屋唐右衛門の創業記念日が近づいて来たが、祝賀会恒例の余興の出し物が種切れで決まっていない。主人の唐右衛門は商用を兼ねて、番頭の金兵衛を地方につかわし、変わった、面白い芸人を探して来るよういいつける。

 金兵衛は行く先々でいろんな芸人と会ったが、どれもありふれた、陳腐な芸でとても祝賀会の余興のレベルではない。ある日、どう間違ったのか山道に入ってしまい道に迷った頃、杖をついてボロをまとった小汚いの老人に出会った。偏屈な爺さんは自分は鉄拐という仙人だという。

 どうせまやかし者と信じない金兵衛に、鉄拐は一身分体の術ができるという。口から息をはくと、鉄拐の体がもう一つでて来る術という。是非、その術を見せて欲しいと懇願する金兵衛に折れて、鉄拐は呪文を唱えて口からもう一人の鉄拐を出した。

 金兵衛はこれしかない、いい芸人を探し当てたと、「・・・是非、上海屋の余興に・・・」、はじめは「仙人が余興の座敷などに・・・」と、断り続けていた鉄拐だが、「人助けと思って・・・」と金兵衛はくいさがる。「人助けとあらば仕方ない」と、鉄拐は山を下りて上海へ行く気になった。

 鉄拐の呼んだ雲に乗って上海屋へ飛んだ二人。早速、主人に話すと大喜び。綺麗な座敷に通してもてなしをと言う主人だが、鉄拐は綺麗な所は嫌だと物置に引っ込み、椎の実をかじっている。

 さあ、創業記念日となって余興が繰り広げられる。むろん目玉は鉄拐の一身分体の術だ。いつもと同じようにボロを着て、ぼさぼさ頭をかきながら、のそのそと舞台に上がった鉄拐。満員の観客が固唾を飲んで見守る中、見事口からもう一身の鉄拐を吹き出した。分身は舞台をよたよた歩いたあと鉄拐の口に吸い込まれた。やんややんやの大拍手、大喝采で祝賀会は大成功となった。

 さあ、こうなると回りはこんなすごい術を使う鉄拐を放っておかない。あちこちから引く手あまた、最初はうるさがり、面倒臭がっていた鉄拐だがあちこちと回っているうちに都会風にも慣れ、宴席では女の子をはべらせ酒も飲み始め、祝儀もがっぽりもらうようになった。

 興行師がついて寄席にも出るようになり、出演料もどんどん入って来て、物置から大きな家に移り、今では厄拐、幽拐、・・・ら何人もの弟子持ちの師匠となってふんぞり返えっている。

 こうなると高慢な鉄拐に嫌気がさし、評判を落としてやろうと企む者たちが出て来る。すぐに二、三人連れで仙人探しに旅立った。幸いにも山奥深くの岩陰で髭だらけの老人に出会う。
張果仙人と名乗り、「俺は口からなんぞ出さん、この酒の瓢箪から駒を出す」、「へぇー、瓢箪から駒じゃ洒落にもなりませんで・・・」

 張果仙人「馬鹿を言うな、この瓢箪からを出す」、「そんな小さな口から本物の馬がでますか・・・」と疑る連中を前に、張果仙人が呪文を唱えると、煙のようにすーっと馬が出て来た。「是非、里に下りてこの術を披露して・・・」だが、張果仙人もはじめのうちは断るが、鉄拐の今の暮らしぶりを聞いて、面白そうと色気が出てきて鼻の下まで伸ばしはじめてOKとなった。

 早速、上海に出てきて寄席に出ると、新し物好きの都会人には馬鹿受けの大人気。一方の鉄拐は飽きられて人気は下がり一方、寄席からも声が掛からなくなる。すっかり人間化して張果仙人に嫉妬し、しゃくに障る鉄拐は張果仙人の家に忍び込み、瓢箪の口から馬を自分の腹の中に吸い込んでしまった。

 翌日、寄席に出た張果仙人だが、瓢箪から馬は出ない。次の日も、次の日もダメ。こうなると寄席も再び、鉄拐頼みとなる。何食わぬ顔の鉄拐「よーし、今度は腹の中から馬に乗った鉄拐を出そう」と言い出す。

 さあ、その晩、久しぶりに寄席の舞台に上がった鉄拐、「馬に乗った鉄拐を出してご覧に入れる」と、口から吐いたが出て来たのは鉄拐だけ。観客は大ブーイングで、金返せの大合唱。そこで鉄拐は窮余の一策、「お客様を私の腹の中に入れて、鉄拐と馬を見せます」で、これがうまくいった。

 ”腹の中で鉄拐と馬見物”が大人気となって、腹の中も連日押すな押すなの大騒ぎ。「・・・もう満員で入れません・・・」、「・・・噂を聞いてベトナムから来たんだ。あばら骨の三枚目あたりにでもぶら下がらせてくれ・・・」と、こんな調子だ。そのうちに腹の中で酔っ払いが喧嘩を始めた。

鉄拐 「痛い!痛い!」ともうたまらず二人の酔っ払いを吐き出した。よく見ると李白陶淵明




    


 李白と陶淵明は酒を愛した詩人
李白は酒に酔って水面に映る月をつかもうとして船から落ちて溺死したと言われ、陶淵明には、『飲酒二十首』がある。



  


立川談志の『鉄拐【YouTube】


鉄拐堂跡(藤堂邸跡)あたり 《地図
鉄拐仙人などの異国風の石像が置かれていたという。
石像群は板橋の乗蓮寺に移転・安置されている。
鉄拐仙人像は『蕎麦ブログ』に載っている。





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