「天王寺三題」
(戒名書き・ブラリシャラリ・悟り坊主)

 
あらすじ お彼岸で天王寺さんには戒名書きがずらりと並んでいる。中にはあまり字が書けないの者もいる。

参拝者 「お願いします」

戒名書き➀ 「へえへえ何という戒名で」

参拝者 「ゴリガリマカラ童子じゃ」

戒名書き➀「けったいな戒名やな・・・これちょっと後回しにしますわ、次のおまっしゃろ」

参拝者 「マイマイチンシャン童女じゃ」

戒名書き➀ 「へへへ、これも後回しで、俗名から書かせておくなはれ。俗名は何と言いまんねん」

参拝者 「泉州堺、大道九間町、包丁鍛冶、菊一文字四郎藤原兼隆、本家根本梶元平兵衛、先祖代々過去帳一切、と書いとくれ」

戒名書き➀ 「うーん、ちょっと小便に行かせてもらいますわ」

戒名書き② 「わたいが書きまひょか。何という戒名だす」

参拝者 「ゴリガリマカラ童子じゃ」

戒名書き② 「これでよろしいか。次は」

参拝者 「マイマイチンシャン童女じゃ」

戒名書き② 「へい、マイマイ・・・・これでよろしいか」

参拝者 「次は俗名じゃ。泉州堺、大道九間町、包丁鍛冶、菊一文字四郎藤原兼隆、本家根本梶元平兵衛、先祖代々過去帳一切、と書いとくれ」

戒名書き② 「それ皆書きまんのかいな、泉州堺・・・菊一文字四郎藤原兼隆・・・先祖代々過去帳一切・・・へえ書きました」

参拝者 「うん、お代はいか程じゃ」

戒名書き② 「そうでんな、八十銭ほどもらいまひょか」

参拝者 「八十銭とは法外な、戒名てなもん大概、一枚一銭か二銭やがな」

戒名書き② 「今の戒名よそでは誰も書けしまへんで・・・もし、どこへ行きなはんねん」

参拝者 「わしも小便じゃわい」

 お参りに来た二人、一人が五重塔の屋根の端の風鐸を指さし、「お前、あの五重塔の屋根の端にぶら下がってるもんの名前知ってるか」

甲 「あれはブラリシャラリちゅうねん」

乙 「違うがな、あれはシャラリブラリちゅうねん」、ブラリシャラリ、シャラリブラリで譲らない二人、五百文賭けようということになる。

甲は茶店で聞いて来ると言って店主に二百文渡し、「あれは、ブラリシャラリと言ってくれ」と頼む。

乙 「何だって言うてた」

甲 「やっぱり、ブラリシャラリと言うてた」

乙 「そんなはずありゃへん」と茶店に行き、「あれはシャラリブラリと言ってくれ」と二百文渡して頼む。

二人そろうて茶店に行って聞くと、

店主 「何や知らんけど、ここに四百(シヒャク)ブラリ」

 参道近くの家の前に薄汚れた身形(みなり)の一人の托鉢僧が立つ。「観自在菩薩・・・・般若波羅密多・・・・」、家の倅(せがれ)が「お通り」と追い払おうとすると、
母親 「ご出家にそんなこと言うもんやあらへんがな。あの御方がひょっとして、入滅されてもあの世に行かず、日本国中を廻国してなはるという弘法大師様やったらどうすんねん」

これを聞いた托鉢僧 「あぁ、隠すより顕わるるとは。わが空海なることを、この家の老婆に悟られか」

母親 「それ見てみいな。弘法大師さんや、南無大師金剛遍照、南無大師金剛遍照」

倅 「お母ん、あんたがしょうもないこと言うやさかい、つけ上がってあんなこと言うてんのや。あいつは茶臼山あたりから出て来る乞食坊主や。わしゃよう顔知ってるねん。な、そやろがな」

僧 「ああ、また悟られた」


   
  


桂米朝の『天王寺三題【YouTube】



四天王寺



熊野権現礼拝石から南大門






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