「時そば」
★あらすじ 「夜鷹そば」の二八そば屋を呼び止めた男、「寒いねぇ、何が出来る」。
そば屋の「花巻にしっぽく」に、しっぽくを頼む。「商売は商い(あきない)と言うから飽きずにやらにゃだめだ」に始まり、行灯(あんどん)が的に「当たり矢」で縁起がいい、出来の早さ、割りばし、綺麗な丼(どんぶり)、鰹節のダシの汁(つゆ)、そばの細さ、コシの良さ、厚く切った竹輪を褒め倒しながらそばをたぐって、さあ勘定となる。
そば屋の「十六文で」に、「銭は細かいよ、手を出せ」と、「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、」と銭を二八そば屋の手の平に乗せ、「今、何刻(なんどき)でぇ?」と聞いた。「九つで」に「十、十一、十二・・・」と払って、さぁーと行ってしまった。
これを一部始終ぼぉーっと見ていた男、よく喋って食い逃げでもするかと思いきや勘定までちゃんと払って拍子抜けだ。それにしても勘定の途中の妙な所で時を聞いたのに気づき、何度も指を折ってやっと納得、一文かすめ取ったことが分かった。
うまいことやりやがった自分もやって見ようと翌晩、二八そば屋を捕まえる。「寒いねぇ」に「今夜はだいぶ暖かで」で、出鼻をくじかれる。
看板の的の「はずれ矢」から始まり、遅いしぬるいし、使い回しの黒ずんで先が濡れた箸、縁の欠けたきたない丼、しょっぱい汁、うどん顔負けの太いそば、丼に張り付いている薄い竹輪麩ではなく本物の麩。とても食べ切れる代物ではない。
でも今夜の目的はそばではない。そばは食べかけのまま男は勘定に取り掛かった。
そば屋の「へい、十六文で」に、
男 「小銭は間違えるといけねえ。手を出しねえ、それ、一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、
今、何刻でぇ?」
そば屋 「四ツで」
男 「五つ六つ七つ八つ・・・・」
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江戸三座の一つ市村座の前に出ていた二八蕎麦の屋台
『大江戸しばゐねんぢうぎやうじ 風聞きゝ』
★柳家小三治の『時蕎麦』【YouTube】
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