「搗屋無間」


 
あらすじ 人形町の搗き米屋越後屋で十三年働いている米搗き職人の徳兵衛は、両国の絵草紙屋で見た、吉原の松葉屋の丸山花魁の錦絵に一目惚れして恋患いで仕事も手につかない。

 これを聞いた幇間の寿楽は、大名道具の花魁と言えども所詮売り物に買い物、金があれば会えると、徳兵衛が十三年で貯めて親方に預けてある十両を持って吉原に行く。

 着物、帯、履物、フンドシまで店の親方から借り、米搗き男はまずいので、木更津のお大尽、指のタコは鼓の稽古でできたもの。寿楽は道すがら吉原のいろは、遊び方を教えるが徳兵衛さんは頭にあるのは丸山花魁のことだけで上の空だ。

 土手八丁から衣紋坂を下って見返り柳から大門をくぐると、その賑やかさ、華やかさに徳兵衛さんは目を白黒、「今夜はどこの縁日だぁ・・・」なんて調子だ。

 見世へ上がると親方から借りた草履を盗まれないようにと懐に入れたり、大尽らしからぬ振る舞いで寿楽も大変だ。まあ、飲んで歌ってお引けとなって無事、念願叶って徳兵衛さんは丸山花魁の部屋へ。

 カラスかぁで夜が明けて、
丸山花魁 「主さん、今度は何時来てくんなます」、涙ながらに打ち明ける徳さん、

徳兵衛 「おらぁ、木更津の大尽なんかではねえだ。人形町の搗き米男だ。花魁に会いたくて十三年働いて貯めた十両でここに参(めえ)りやした。今度来るのはまた十三年経ってから・・・」、

 徳兵衛の情にほだされた丸山花魁は、「偽りばかりのこの世に・・・」と、徳さんにぞっこん。それからというもの、見世の遊び代は全部花魁持ち、徳さんは大手を振って通い続ける。そうなると丸山花魁の客も、「花魁には真夫が出来ちまった。もう面白くねえから行くのはやめだ」で、客足は遠ざかり、花魁の金は底をついてしまった。

 徳さんも花魁のところへは行けず、以前のように米を搗いているだけのむなしい日々。ある晩、庭先でぼんやりと丸山花魁のことを思っていると、隣家が宴会で、♪「梅が枝の手水鉢、叩いてお金が出るならば、ヨイヨイ、もしもお金が出た時は、その時ゃ身請けを、そうれたのむ・・・」と歌うのが聞こえて来た。

 そう言えば梅が枝という遊女が無間の鐘の代わりに手水鉢を叩いて、三百両の金を得た浄瑠璃があったなと思い出した徳さん、店先から大道臼の杵を持ってきて、手水鉢を叩こうと振り上げたら、上の棚にガーンとぶつけてしまった。棚が壊れて金がバラバラと振って来た。数えて見ると二百四十両、「ああ、二割は搗き減りか」


    

浄瑠璃「ひらがな盛衰記」の四段目:「神崎の廓に身を沈め、傾城梅が枝と名乗る千鳥は梶原源太の出陣の鎧を請戻す三百両を得るため、無間の鐘の代わりに手水鉢を叩こうとすると、二階から三百両の金が降って来た。来合わせた源太の母の延寿がそれと分らずに金を与えたのだ。梶原父子を親の敵と狙う千鳥の姉のお筆も、延寿の情ある計らいに心解け、源太は出陣する」
無間の鐘を撞けば大金持ちになれるが、死後は地獄に堕ちるという伝承。
梅が枝節はこの無間の鐘(遠州七不思議)によって作られた。
参考:『無間の鐘を追ってみた

この噺の出だしは『幾代餅』と同じだが、二百四十両の金はどうなったやら。




搗き米屋



絵草紙店



日本堤(土手八丁)・衣紋坂・見返り柳

新吉原


大門





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