★あらすじ 気が長い長さんと気短な短七は、気性は真逆だがなぜか気の合う、子ども頃からの遊び友達だ。
ある日、長さんが短七の家へ遊びに来る。戸の前でウロウロ、中を覗いたりしている長さんに気がついた短七さんは、じっれたくてしょうがない。戸を開けて長さんを引っ張り込んで、饅頭を食えと勧める。饅頭を食べ始めた長さんはいつまでも、口の中で牛みたいにくちゃくちゃやっている。見かねた短七さんは、こうやって食うんだと一つを丸飲みして、目を白黒させている。
今度は長さん、煙草に火をつけようとしたが、なかなかつかない。短七は見ているだけで、まどろっこしくてイライラしてくる。やっと火がついて吸い出したが、その悠長な吸い方に我慢が出来ない。見本を示そうと、「煙草なんてものは、こうやって吸って、こうやってはたくんだ」とその動作の早いこと。
目を丸くして見ている長さんの前で、何度もくり返すうちに調子に乗り過ぎて火玉が袖口からすぽっと中に入ってしまった。一向に気がつかない短七に長さんは恐る恐る、「これで短七つぁんは、気が短いから、人に物を教わったりするのは嫌えだろうね」
短七 「ああ、でぇ嫌えだ」
長さん 「俺が、教(おせ)えても、怒るかい?」
短七 「おめえと俺とは子供のころからの友達だ。悪いとこがあったら教えてくれ。怒らねえから」
長さん 「・・・・ほんとに、怒らないかい? そんなら、言うけどね、さっき、短七つぁんが何度も煙草を威勢よくポンとはたいたろう。その一つが煙草盆の中に入らないで、左の袖口にすぽっと入っちまいやがって、・・・・煙(けむ)がモクモク出て来て、だいぶ燃え出したようだよ。ことによったら、そりゃあ、消したほうが・・・」
短七 「あぁ〜、ことによらなくたっていいんだよ。何だって早く教えねえんだ。見ろ、こんなに焼けっ焦がしが出来たじゃねえか、馬鹿野郎!」
長さん 「ほおら見ねえ、そんなに怒るじゃあねえか、だから教えねえほうがよかった」
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