「高尾」


 
あらすじ 後世に名を残した者は数多あれど、士では曽我兄弟・赤穂浪士・伊賀上野鍵屋の辻の三大仇討、農では義民佐倉惣五郎、工では左甚五郎、商は紀伊国屋文左衛門が名高い。
遊女、花魁では落語『幾代餅』であなじみの幾代、もとは丹前風呂の湯女であった勝山、お金を知らず廊下に落ちていた穴あき銭を虫と言ったという薄雲など百花繚乱だが、なんと言っても有名なのは三浦屋の高尾で11代まで続いたという。

 落語『紺屋高尾』は五代目で、中でも多くの逸話を残すのが仙台(伊達)高尾・万治高尾ともいう二代目の高尾で、美貌はもちろん、教養も身につけ、和歌・俳諧から囲碁、将棋、さらには花札、丁半のサイコロまでお手の物だったとか。文章も達者で、伊達の殿さまに、「夕日も波の上の御通わせ、御館(おやかた)の首尾いかがおわしますやと御見ののち、忘れぬばこそ思いいださず候かしく」と書いて、「君は今駒形あたりほととぎす」の句を添えて贈ったものだから、仙台公はすっかり高尾に惚れられているものとのぼせ上り、足しげく吉原通いとなった。

 すっかり高尾の虜(とりこ)になった仙台公は大金を払って高尾を身請けし、屋敷に連れて来たが、高尾は意のままにならない。ある日、芝汐留の上屋敷から屋形船で舟遊びに出た。殿様は呑んだ大盃で酒を勧めるが、高尾は首を振って受けようとはしない。「なぜ余の盃を受けぬ」と怒ってせまる殿様に、高尾は「わが身、廓(くるわ)にありし時に因州鳥取の浪人島田重三郎という二世と交わした夫がいる」と、冷たく断ってきた。殿さまの心中はさしずめ「今さら何を言っていやがる、大金を払わせやがて、ふざけるな」で、往復ビンタで張っ倒したいところだろう。そこは武士のはしくれ、黙って刀を抜き高尾に近づく。高尾はじりじりと船べりににじり寄り入水の覚悟だ。

 殿様は刀を大上段に振りかぶるが、死を覚悟した高尾の美しさに刀を振り下ろせない。そこへ船上の能楽の連中の鼓の音が流れて来た。
(謡曲風に)殿さま「これ高尾、なぜその方なびかぬぞぉ〜」に、高尾が「いやぁ〜」、殿さまは鼓の掛け声と聞いて、「ぽんぽん」と切ってしまった。






江戸新吉原八朔白無垢の図



高尾の恋人の島田重三郎の登場する『反魂香』はこの続編のような噺。

伽羅の下駄』にも仙台の殿様と高尾が登場する。


   

春慶院(東浅草2丁目)

二代目高尾太夫の墓がある。





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