「焼き塩」


 
あらすじ 大店に奉公している女衆(おなごし)へ里から手紙が来る。先日、村の人にばったり会った時、母親が病気で容態が重いと言っていたのが気にかかる。いつも読んでもらっている二番番頭は出かけている。一刻も早く手紙の中身を知りたい女衆はちょうど店の前を通りかかった若い侍に読んでくれと頼む。

 侍は往来の真ん中で手紙を開き、二、三度目を走らしてたかと思うと、ポロッとを一筋流した。これを見た女衆が、「母(かか)さんの病気のことが書いてございまっしゃろか?」と心配そうに問うと、侍は「残念なことじゃが、もう間に合わん」で、女衆もワァーと泣き始めた。

 往来の真ん中で、若い侍と女衆が泣いているのを通行人が不思議がって見ている。そこへ「焼き塩〜焼き塩〜」と、塩売りの親爺が通りかかる。 泣いている二人と、手に持っている手紙を見て、身分違いの恋、結ばれぬ恋を嘆いて泣いているのだと勘ぐって、これは心中物だ、若い身空に可哀そうなことだと、もらい泣きをし出した。

 これを回りで見ていた近所の人が声を掛ける。女衆は、「もう間に合わん」と聞いて母親の身を案じて泣いていると言い、なるほどもっともなことだ。侍は、「武芸一筋で読み書きの方には身を入れず、未だ字が読めない。若い女中から文(ふみ)を読んでくれと言われ、文を広げたがまったく分からず往来の真ん中で恥を掻いたことが、”残念なことじゃが、もう間に合わん”」と読み書きの手習いをしなかったことを悔やんで涙を落としたと言う。これもまあ分かる。

 近所の人は、手紙を受取り読みあげると、「もはや本復も間近く、近々床離れと相成るべく、何とぞご放念くだされたく・・・・」で、安心した女衆はすっかり笑顔になって、「ありがとうございます」。
さて、塩売りの親爺はなんで泣いたのだろうと、「あんた何で泣いてんねん?」
塩売りの親爺 「いや、わたいはあんた・・・・商売が”泣き塩〜”」




「心中物」(小西酒造)から

                                   


桂米朝『焼き塩【YouTube】

   御塩殿(みしおどの)神社 《地図

二見道
   

御塩汲入所(左)・御塩焼所(右)

御塩浜から濃い塩水を汲入所に運び、焼所で荒塩にする。

   

御塩殿

年2回(3月・10月)、荒塩を焼き固め堅塩にして、御塩道を通り伊勢神宮外宮へ奉納する。

ちょっど御塩焼固めの神事が行われていた。若い宮司さんが出てきて詳しく説明してくれた。参拝者は我一人。雨の中、ここまで歩いて来ていい機会を得て疲れも忘れた。






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