「厄払い」



あらすじ おなじみの与太郎さん。いい歳して毎日ぶらぶら遊んでいてお袋さんの世話になっている。
心配した伯父さんが、大晦日の「厄払い」を言って回り、小銭と豆をもらって稼いで来てお袋に渡すように言い、厄払いの文句を教える。
「あらめでたいなめでたいな、今晩今宵のご祝儀に、めでたきことにて払おうなら、まず一夜明ければ元朝の、門(かど)に松竹、注連(しめ)飾り、床に橙(だいだい)鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、鶴は千年、亀は万年、東方朔(とうぼうさく)は八千歳、浦島太郎は三千年、三浦の大助百六ツ、この三長年が集まりて、酒盛りをいたす折からに、悪魔外道が飛んで出で、妨げなさんとするところ、この厄払いがかいつかみ、西の海へと思えども、蓬莱山のことなれば、須弥山(すみせん)の方へ、さらぁ〜りさらり」だが、むろん与太郎さんが覚えるのは無理な話、伯父さんは紙に書いてカナを振って渡す。

 家に帰った与太郎さん、厄払いの文句を練習でもすればいいものを、ゴロっと寝てしまい、夜になって起きだして、のそのそと厄払いに出かけた。もう厄払いの済んだ家に入って断られ、「もう一ぺん払いなさい」で追っ払われる。前を上手な掛け声の本職の厄払いが歩いている。与太郎さんはしつこく後をつけ回し、困った厄払いは逃げ出した。

 ある商家で声を掛けるとまだ、厄を払っていないからと頼まれ、家の中へ呼び入れられる。図々しくも前払いでもらった豆を食い、茶を催促し小銭を数える。「何だ、一銭五厘か。身代は立派だがやっぱり懐(ふところ)は苦しいか」なんて言いようだ。

 やっと本業を思い出した与太郎さん、カンニングペーパーを取り出し、厄払いの始まりだ。最初から「あらめ うでたいな」と苦戦だ。「鶴は十年」と短命、「亀は万年」だが、万にカナが振っていない。この店の看板が「万屋」だったことを思い出し、店の名を聞くと、「万屋(よろずや)」で、「亀はよろず年」となった。
次の「東方朔」の朔も振りガナなしだ。「とうぼう、とうぼう・・・・」と詰まって、面倒くさくなって逃げ出した与太郎さん。お祓いの部屋が静かになったので、旦那が店の者に様子を見にやると、もぬけのから。
表の通りを一目散で駆けて行く与太郎を見つけた店の者が、
「あっ、だんな、厄払いが逃げて行きます」

旦那 「逃げて行く。それで、いま逃亡(=東方)と言ってた」





      




柳家小三治の『厄払い【YouTube】





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