「湯巻誉め」


 
あらすじ 昔は男でも腰巻をしていた。横町の隠居は湯巻にたいそう凝っていると聞いた熊さんがやって来て、

熊さん 「世間では隠居の事を腰巻隠居、湯巻隠居なんて言ってますけど、そんなに腰巻が好きなんで?」

隠居 「あぁ大好きだ。普通の色とか柄ではつまらないので、工夫していろんな腰巻をして楽しんでいるな」

熊さん 「へえ、そんな派手な腰巻見たことありゃしません。ひとつどんな見せてくださいな」

隠居 「まあ、あまり人に見せるようなものではないが、おまえさんとわしの仲だからいいだろう。あの長持の中に入っているんだ」、開けると中には色とりどりの腰巻がいっぱい詰まっている。

熊さん 「この一番上の門松に獅子舞に羽子板に独楽、綺麗ですなあ」

隠居 「あぁ、お正月の風景だ。正月にはそれを締めて正月気分を味わうんだ」

熊さん 「なるほど次は雪の降っている中を傘をさして人が寒そうに歩いてますな。何か脇に字が書いてありますが・・・」

隠居 「それは初雪や二の字二の字の下駄のあとという句だ。二月はこれを締めて、雪見と洒落て一杯やるのが楽しみだなあ」

熊さん 「これは桜、お花見の三月か」

隠居 「町内のお花見にはこれを締めて行けば、目からも肌身からも桜が味わえると寸法だ」

熊さん 「なるほど、腰巻てえのは風流なもんですねえ。これは金太郎に鯉のぼりで五月、これは雨が降っていて柳に蛙が飛びついている柄で梅雨時の六月はこれか、夕立に雷、・・・夏の蛍で・・・紅葉狩でもう秋か」

隠居 「どうだ一年中、春夏秋冬、四季折々、月ごとに腰巻替えて楽しめるということだ」

熊さん 「へい、恐れ入りやした。人から見えないとこに金かけて自分一人で楽しむなんてのは贅沢な遊びしてますなぁ、・・・けど、これはもう餅つきの柄になってる。町内恒例の十月の松茸狩には何を締めて行くんですかい?」

隠居 「あぁ、その時ははずして行くんだ」


    


        

686(2018・3)




表紙へ 演目表へ 次頁へ