「夢八」  露の五郎

 
★あらすじ 起きても寝ても一日中夢を見ているという夢八。朝から何も食べていない。甚兵衛さんから一寸した儲け話があると呼び出される。一晩じっと坐っていて、つりの番をするだけでいいという。「釣りの番」かと聞くと、甚兵衛さんは「つった人」の番だと言う。

 割り木を一本持たされ、一緒につりの番に出かける。途中、甚兵衛さんはお直さんの家に寄る。まだ検死も済まず、「ぶる下がったまま」という。

 お直さんが作った弁当を持って「つりの番」の家に行く。夢八をムシロに坐らせ、弁当を食べさせる。二つ重ねの重箱弁当だ。上に煮しめと高野豆腐、下はおにぎりという豪華版に腹ぺこ夢八はかぶりつく。あわててのどに詰まらせる有様だ。

 甚兵衛さんは、いくら食べてもいいから眠らないように、割り木で床を叩き続けていろという。そして前に掛かっているムシロの向う側は絶対に見るなと言い残し、外から鍵を掛け帰ってまう。

 暗い中一人残された夢八、しばらくは割り木を叩き、弁当を食っていたが、絶対に見るなと言われた、前のムシロの向こう側が気になって仕方がない。よく見るとムシロの上から頭がはみ出している。大きな人だなあなんて感心し、こっちへ出て来て一緒に坐ろうなんて言ってみても何も返事がない。

 そして足が宙吊りになっているのに気づき、「首吊りの番」だとやっと分かる。恐さのあまり泣きながら叩いた割り木がムシロに当たり、パラッと落ちると目の前には首吊りがだらりと下がっているからたまらない。

 泣きながら割り木を叩き続けるうちに、夜もふけて丑三つ時。屋根を歩いていた古猫が夢八の臆病をからかってやろうと、死体に息をフウ〜と吹きかけると、なんと首吊り死体が喋り出した。

首吊り 「おい、そこの番人、伊勢音頭を唄うてくれ」

夢八 「そ、そ、そんなもん知らんわい、知らんわい」

首吊り 「知らん?よっしゃ、唄わなんだら、そこへ行て頬っぺた、舐(ねぶ)ぞ」

夢八 「うわ〜 来たらあかん、来たらあかんがな・・・唄う、唄う、・・・♪伊勢は津で持つ、津は伊勢で持つ・・・」

首吊り 「♪あ〜、よいよい」

夢八 「いかん、いかん、物言うたらあかんがな・・・♪尾張名古屋は城で持つ、やあとこせいの、よ〜おいやな〜」

首吊り 「♪ありゃりゃ、これわいさのさ〜、このなんでもせ〜」、首吊りが調子に乗って合いの手を入れて体を揺すったものだから綱がプツンと切れ、夢中で唄っている夢八の前に首吊りが落っこちてきた。夢八はう〜んと目を回してしまった。

 翌朝、甚兵衛さんがお直さんの所へ行くと、夜通しトンタントンタン叩いてやかましかったけど、さっきから静かになったという。甚兵衛さんは夢八が寝てしまったと思い行って見ると、仲良く首吊りを抱いて寝ている。甚兵衛が揺り起こすと、

夢八 「唄います、唄います、♪伊勢は津で持つ、津は伊勢で持つ・・・」

甚兵衛 「ハハハ、ちゃんと伊勢参りの夢見とるんや」


     

露の五郎は平成17年10月に元名の露の五郎兵衛(二代目)を襲名しました。初代は元禄時代の落語家で上方落語の祖と言われています。また平成15年6月まで上方落語協会会長でした。二代目桂春団治の弟子だった頃の師匠の逸話や、思い出を枕のところで語っています。
 腹を空かした夢八が弁当をほうばる仕草や、ムシロが落ちて首吊り死体が現れる場面の所作がおかしいらしく爆笑が起こっていました。
夢八の伊勢音頭に浮かれて、合いの手を入れる首吊りさんも愉快です。首なんか吊らなきゃよかったのに。
 落語に出てくる甚兵衛さんは人のいい、面倒見のいい人物と決まっていますが、この噺の甚兵衛さんは面倒見はいいが、ちょっと人の悪いところもあるようです。


桂小南(2代目)の『夢八【YouTube】



伊勢神宮の宇治橋から五十鈴川

伊勢街道D



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