★あらすじ 相模屋の若旦那の道楽息子の作次郎、お茶屋遊びが過ぎて親旦那から二階へ幽閉、軟禁状態にされている。
町内の幇間の喜三郎、金がありそうなやつと見れば、ベンチャラで取り巻いて離れないので、”チャラキ”と呼ばれている。今日は網船で網打ちをやった後、屋形船に乗りつけ新町の芸妓連たちと遊ぼうという趣向だが、肝心の作次郎が来られそうもない。
チャラキは何とか作次郎を連れ出そうと、悪知恵を働かせて相模屋へやって来る。また息子を遊びに誘いに来たと思い、親旦那に素っ気なくあしらわれたチャラキ、「今日は若旦那は網船で江戸堀の料理屋の若旦はんと金儲けの話で会う約束がありますのんや・・・」、
親旦那 「何だって?うちの作次郎と違って稼業一筋の料理屋の若店主と、金儲けとの話だと・・・」、思った通り金儲けの話には目の無い親旦那はチャラキの話に乗って来た。
親旦那 「だが、金儲けの話なら網船などに乗らんともうちの座敷でも出来るじゃろうが」
チャラキ 「網打ちして獲れた魚をを売れば三十両の儲けになりますのや」、三十両と聞いて作次郎の外出を許したまではチャラキの予定通りだが、
親旦那 「わしも網打ちをして三十両儲けてみたい。網船に一緒に乗せてくれ」と、強引について来る。網船に乗った三人だが料理屋の若店主など来るはずもなく、
チャラキ 「忙しくてどうしても店を離れられず、今日は来られなくなって・・・」と、苦しい言い訳。でも網船から屋形船に乗り換える前に親旦那を何とかしなければならない。
チャラキは船頭に、「木津川口あたりで船を大きく揺らして、親旦さんを気分悪うさせてしもうて陸(おか)へ上げてしもうてくれ」と頼む。
作次郎 「どうせなら川の中州に上げて、水かさが増して流してしまえば・・・」なんて無茶なことを言っている。しばらくして船頭は言われた通りに船を大きく揺さぶり始めた。風も波もなく川の流れは穏やかで、ほかの船はゆったりと進んでいるのに、この船だけが大地震で津波でも来ているかのような揺れ様だ。
ついに、「うぅ~、気持ち悪い、もう吐きそうだ。だめだ、陸に上げてくれ~、うぅ~・・・」と、親旦那が音(ね)を上げたと思いきや、船酔いしたのはチャラキで親旦那はなんともない顔で揺れるのを楽しんでいるようだ。
そうこうしているうちに屋形船が近づいて来て芸妓たちが立ち上がって扇を振っている。何を思ったかチャラキは船頭に網船を屋形船に接近させて、作次郎に網を打たせた。
チャラキ 「ああ、屋形船に網を打ってしまった。わてが謝って来ますよって・・・」と、屋形船に乗り込み、しばらくして戻って来て、
チャラキ 「あの船には薩摩の荒くれ侍が乗っていて、屋形船に網を打つとは無礼千万、船主を出せ手討ちにしてくれるとカンカンで・・・もう一度、若旦はんと二人で謝りに行きますが、何せ荒っぽい田舎侍のこと、どうなることやら・・・、親旦那はんは一足早く、この船で逃げよっておくれやす」と、まんまと屋形船に乗り込んだ。
うるさい親父をやっと追っ払った作次郎、すぐに芸妓たちとバラ拳を始めて盛り上がっている。一方の岸へ向かっていく網船では、
船頭 「旦さん、あの屋形船の上は今頃、剣の舞いですがな」
親旦那「あんな拳の舞いなら、わしも乗りたいがな」
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