★あらすじ 町内の若い者が五、六人集まって、吉原へ遊びに行くことになった。
辰公 「ただ行くだけじゃつまらねえや。なにか趣向をこらしてむこうをびっくりさしてやろうじゃねか」、みなで悪ふざけの作戦を練って段取り役割を決め、粟餅と灰色がかった砂糖を買って吉原に乗り込んで見世に上がった。
飲んでわいわい騒いでいるうちに、与太郎が腹が痛いと言い出した。別の部屋に布団を敷いて寝かせると、与太郎は粟餅を砂糖でこねて人糞のかっこうに作り上げて布団の上に置き、煙草盆の灰の代わりに灰色がかった砂糖を入れて便所へ行く。頃合いを見計らって、
辰公 「与太のやつ大丈夫かなあ」
熊公 「今便所に行ったようですよ」
辰公 「そいつはいけねえ。あいつは尻癖が悪くって、便所へ行ったときはきまって寝糞をたれているんだ」、行って見ると布団の上にコロコロと転がっていて、女どもは、「きゃぁ~」
辰公 「しょうがねえやつだ。けど、おれは与太の友達なんだからおれが始末をしよう」
熊公 「与太はおれの弟分だからおれにやらしてくれ」
辰公 「出しゃばるんじゃねえ、引っ込んでいろ」
熊公 「なに、てめえこそ、よけいな世話やくんじゃねえや。おとなしく糞でも食らっていやがれ」
辰公 「糞、ああ食らってやろうじゃねえか」と、煙草盆の灰をまぶして食い始めた。
熊公 「この野郎、さきに食いやがって・・・」と食い始め、ほかの仲間もおれもおれもと食い始めた。
女 「まあ、いやだこと。あんなもん美味そうに・・・毒だからおやめなさいな」、そこへ便所から帰ってきて、
与太郎 「あれ、みんな食っちまっておれの分がねえじゃねえか」
辰公 「あんまりうめえもんだから、みんなで食っちまったんだ」
与太郎 「へへへぇ、そんなことだろうと思って残りはあの神棚に上げといたんだ」
女 「まあ、あきれた。そんなもったいないことするとばちが当たるよ」
与太郎 「なあに、もったいないことはねえ。ちゃんと食べる前にお初に供えたんだ」
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