「大師小咄二題」
(大師巡り・大師の馬)

 
あらすじ 相模屋の若旦那の道楽息子の作次郎、お茶屋遊びが過ぎて親旦那から二階へ幽閉、軟禁状態にされている。

 幇間の喜三郎チャラキが二十一日の”大師巡り”にかこつけて、作次郎を連れ出して、南地へ遊びに行こうとやって来る。息子を遊びに誘いに来たと思い、親旦那に素っ気なくあしらわれて、チャラキ 「今日は若旦那と大師巡りに行く約束が・・・」

親旦那「それは御奇特なことじゃ。わしも連れて行ってもらおう」で、ちょっと計画からはずれたが、三人で出掛ける。途中、足の遅い親旦那を撒いて南地へやって来たが、ばったりと親旦那に会ってしまった。

親旦那 「これ作次郎、お大師さんのおっしゃったことに嘘はないやろ」

作次郎 「・・・何のことでっしゃろ?」

親旦那 「落つれば同じ谷川の水じゃ」

           

 諸国巡錫中の弘法大師がある家の前を通り掛かると女房が豆を炒っている。いい匂いなので空腹を感じて、
大師 「その豆を少しだけ分けていただけないか」、女房は大師の頭の上から足の先までをずーっと見て、こいつは乞食坊主と判断、
女房 「これはの餌で、人間の食う物ではねえだよ」で、あっさりと諦めた大師は立ち去って行った。しばらくして亭主が畑から帰って来た。炒り立ての豆を出すと亭主は美味そうにぱくついた。

 すると、「ヒヒ、ヒヒーン」と亭主は馬になってしまった。さっきの坊さんは大師さまだったと気づいた女房は後を追いかけ、「先程は馬が食べると嘘をつきました。帰って来た亭主があの豆を一口食うなり、馬になってしもうた。 どうか戻って亭主を人間の身体に戻しておくれなせえ」

 大師が戻って亭主の頭から順に撫でて行くと、そこが馬から人間の身体に戻って行った。そばでじーっと見ている女房、大師が馬の両足の間を撫でようとすると、「あぁ、そこだけは、そのままにしておいてくだせえ」
          
           








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