「動物小咄六題」
(蛙の牡丹餅・蛍の探偵・蛸の手・まわり猫・蚊いくさ・油屋猫)

 
あらすじ 小僧の定吉がお駄賃に牡丹餅をもらった。店が終わってからゆっくり食べようと、桶の下に隠し、「人が見たらになれよ」と言って店に戻った。

 これを聞いた番頭がからかってやろうと、蛙を捕まえて来て牡丹餅と入れ替えた。
やっと店が終わって今日の楽しみの牡丹餅を食べようと定吉が桶を上げると、蛙がぴょんぴょん飛び出して来た。
定吉 「おい、おい、おれだ。そんなに跳ねるとアンコが落ちてしまうよ」

             

 夏の盛りに田舎から大阪見物に来た二人連れ。道頓堀近くに宿を取ったが、風がばったりやんで蒸し暑くて眠れない。そのうちに蚊帳の中に蚊が入って来て寝苦しいどころではなくなった。
茂作 「どうしたら、この蚊から逃げられるだべか?」

与平 「川へ飛び込んだらどうだべ。蚊にも攻められんし、水の中は冷えて気持ちがええし、川の上には風も流れてるしな」と、二人で宿を抜け出し川の中にどっぷりとつかってご満悦。するとフワリ、フワリと蛍が飛んで来た。

茂作 「こりゃあかん。蛍の探偵が提灯ともして捜しに来よった」

          

 明石の浜でがぐっすりと昼寝をしていると、が蛸の手を七本も食ってしまった。
やっと気づいた蛸、「ようし、今度近寄って来たら、一本の手で猫を巻き込んで、海へ引きずり込んでやろう」と、狸寝入りをして待っているが猫はなかなか近寄って来ない。

 しびれをきらした蛸 「早う、残りの一本も食うてしまえ」

猫 「その手は食わん」

          

 ある商家の旦那がお得意先から可愛い子猫をもらって来た。
旦那 「番頭さん、この猫に名前をつけてやっとくれ」
番頭 「強そうな名前で弁慶はどうでしょう」
旦那 「そうか、じゃあ弁慶としよう」
定吉 「弁慶よりもっと強いものがあります。牛若丸の方が強いです」」
旦那 「じゃあ、牛若丸といしよう」
亀吉 「牛若丸より鞍馬の天狗の方が強いです」
旦那 「なるほど、じゃあ天狗だ」
お清 「天狗さんが羽を休める杉の木の方が強うございます」
旦那 「うん、杉にしよう」
松吉 「杉よりもそれをなぎ倒す風の方が強いです」
旦那 「そうだな、風か」
亀吉 「風は塀が止めます」
旦那 「それじゃ、塀だ」
お茂 「塀よりもそれに穴を開ける鼠に方が強うございます」
旦那 「そうか、この猫の名前は鼠か」
奥さん 「鼠より猫の方が強いです」
旦那 「そんなら、やっぱりこの猫の名はネコじゃ」

          

 八百屋の久七は剣術に凝って、商売を怠けて道場に稽古通いで夏になっても蚊帳は質に置いたまま。
女房 「お前さん、毎晩、子どもがに食われて可哀想だから、商売して蚊帳を請け出ておくれよ」、仕方なく久七は道場の先生にしばらく稽古を休むと申し出る。

先生 「左様か、しかし蚊が出なくなれば稽古が出来ると言うならば、一国一城の主となったつもりで蚊と一戦を交えなさい」、その夜はかみさんと力を合わせ蚊を城内から追い出してひと安心。さあ、寝ようとすると、ブゥーンと敵の襲来。

久七 「おのれ落ち武者の分際で・・・あれ、また来やがった。・・・こう敵に侵入されては多勢に無勢・・・もうかなわん。北の方、城を開け渡そう」

               

油屋に毎晩、化け猫が出ると言う噂が立ち、油がだんだん売れなくなってきた。油屋の主人が怒って、夜起きて待ち構えていると、ほんまの化け猫のようなやつが出て来よった。
主人 「こら、おのれのために悪い噂が立つんや!」と、石を投げつけると、ひょいと体をかわして、
猫 「あぶらやのう」

             










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