「へっつい幽霊」
★あらすじ 道具屋に置いてあるへっつい(竃)、3円で売れるが、なぜかすぐ客が引き取ってくれと言って戻ってくる。1円50銭で引き取るので、返品があるたびに儲かるが他の品物も売れなくなってくる。あるじが近所で変な噂を耳にする。へっついから幽霊が出るというのだ。女房が1円つけて誰かにもらってもらおうと言い出す。
この話を聞いていたのが隣の裏長屋に住む渡世人の熊五郎。早速、へっついと1円をもらい大店の若旦那で道楽が過ぎて、勘当寸前の銀ちゃんとへっついをかつぎ出す。
銀ちゃんが路地でよろけて、へっついの角が割れる。すると、そこから白いかたまりが落ちる。へっついを銀ちゃんの部屋に入れ、熊さんの家で落ちた白いかたまりを開ける。300円の大金だ。仲良くきっちり150円づつ分け、熊さんは博打場へ、銀ちゃんは吉原へまっしぐら。
すっかり金を使い果たした銀ちゃんが長屋に帰って来る。熊さんも博打ですっからかんになって帰って来て寝込んでしまう。夜更けに銀ちゃんの所に置いてあるへっついから幽霊が、「金返せ〜」と現れる。
びっくりして銀ちゃんは目を回してしまった。悲鳴を聞いて熊さんが飛び込んで来る。銀ちゃんの話を聞いた熊さん、翌朝、銀ちゃんの親の店に行き、300円返さないと若旦那は幽霊に取り殺されると言って300円の金を出してもらう。
へっついを熊さんの部屋に移し、明るいうちから幽霊が現れるのを待つ。やっと現れた幽霊の話を聞くと、左官の長兵衛といい、博打で大儲けした金の一部をへっついに埋め込んで、フグ鍋(河豚鍋)で一杯やっていたら、フグにも大当たりで、ふぐに死んでしまったのだという。金に未練が残り出てくるのだ。
熊さんは幽霊と交渉、談判して150円づつに分けることで話をつける。お互い博打好きの二人、中途半端な金はいやなのでサイコロ賭博でどちらかにおっ付けてしまおうということになる。
サイコロ二つを壷に入れ、出た目の合計の長(偶数)か半(奇数)で勝負だ。むろん、幽霊は左官の長兵衛の名の通り、「長」で勝負する。いざ、壷を開けると、「五、六」の「半」。幽霊はがっかりして消えてしまいそうになるが、
幽霊 「親方、もう一丁、勝負お頼みもうしやす」
熊五郎 「折角だけどそれは断わろうじゃねえか、お前のところに銭のねえのは分かっているんだ」
幽霊 「へへへ、親方、安心してください。あっしも幽霊だ、決して足は出しません」
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★古今亭志ん朝『へっつい幽霊』【YouTube】
左官・植木屋
歌川国輝:「衣喰住之内家職幼絵解之」
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