「富士詣り」
★あらすじ 長屋の連中が講を組んで大家を先達にして富士登山だ。晴天の下を「はっ、はっ!六根清浄、お山は晴天」と、唱えながら登って五合目で休憩だ。すると急に雲行きが怪しくなり暗くなって来た。
先達さんはこの中に、お山に登る前の水垢離を取らなかった者、五戒を犯した者がいて、山の神様の怒りに触れ山が荒れるのだ。懺悔して許しを乞わないと、天狗に股を裂かれると言う。
身に覚えのある連中は、天狗が怖くて進んで悪事を白状し始めた。八さんは湯の帰りに、自分の汚い下駄の代りに、隣の新しい下駄をはき、ついでに番台から湯銭を失敬したと偸盗戒を告白。てんぷら屋で食ったてんぷらの数をごまかした奴、屋台のそば屋で刻(とき)を数えてそば代を一文かすめ取った奴など偸盗戒が続出だ。
見ると熊さんが端の方でぶるぶる震えている。先達さんがお前も何か盗んだのかと聞くと、「色事、それも人のかみさん」という。五戒の中でも一番罪の重い、邪淫戒でそれも間男なら、天狗の股裂き、八つ裂きは必定だ。
先達さんにせかされて、熊さんの告白が始まった。ある日湯から出たら、ちょうど女湯から出てきた知り合いのおかみさんに出くわした。家の前まで来ると、上がってお茶でも飲んでと言う。旦那は用事で遅くなり、女中は田舎に帰っていると言う。家に入ると洗濯物がどっさり、台所に洗い物がぎっしりだ。熊さんは気をきかせて洗濯、台所の片づけ、ついでに座敷の掃除、手水場の金隠しを拭いて、その手で糠味噌を掻き回してから猫の餌やりまで働いた。
おかみさんはすっかり喜んで、ぴたっと熊さんのそばに座って、お茶を飲んだりかき餅をかじったりのいい雰囲気になった。これはチャンス到来と熊さんはおかみさんの膝をつねった。「あら、何にすんのよ」とぽんと腕を払われたが、しぶとくまたつねって、・・・・・。
興味津々(しんしん)、すっかり聞き入っていた先達さん、「この野郎うまくやりゃあがって、どこのかみさんだ」、熊さん「すまねえ、先達さんのだ」と、とんだ落ちがついた。
こんな悪事、懺悔ばかり聞いていては日が暮れてしまいそうで、そろそろ出発と見回すと辰さんが青い顔でうずくまっている。お前も五戒を犯したのかと聞くと、二日酔いみたいに気持ちが悪く吐きそうだという。
先達さん 「あぁ、お前は初山で酔ったのだ」
辰さん 「酔ったかも知れねえ、ちょうど五合目だ」
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「赤富士」(富嶽三十六景・葛飾北斎)
★柳家権太楼の『富士詣り』【YouTube】
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蛭ケ小島跡近くから 《地図》
20年にも及ぶ源頼朝の配流地。西方の北条氏宅の政子と出会い結ばれた地。
『下田街道①』
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横山坂(下田街道)から
狩野川、国道、その下に伊豆箱根鉄道 |
東海道薩埵(さった)峠から駿河湾(「油井」広重画)
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薩埵山(峠)の由来は下の海岸から地蔵薩埵の像が漁夫の網に掛ったことからという。この地蔵は上道の地蔵堂に安置されているそうだ。「薩埵」とは、密教で「衆生」という意で、大日如来の悟りを衆生に伝えるために使わされた地蔵ということか。
『東海道(油比宿→府中宿)』 |
「江戸自慢三十六興 目黒行人坂冨士」 「名所江戸百景 目黒元不二」
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