「池田の猪買い」


 
あらすじ 丼池(どぶいけ)の甚兵衛さんの所へ、鼻の頭を真っ黒にした男がやって来る。ノボセ止めの灸(やいと)を上へ上へ据えろといわれ、頭の後ろから上へ据えて、頭上から下がって鼻まできて、この先は口で行止まりで据えられず、鼻の頭に据えているうちに真っ黒になったという。

男はノボセは治ったが、今度は体が冷えて困るという。甚兵衛さんは冷えには(シシ)の身がよく効く教える。それも店で売っているような身ではなく、獲れたての新しい猪の身でないとだめだという。甚兵衛さんは池田山猟師の六太夫の所へ行って、新しい猪を売ってくれと頼めという。

翌朝、男は丼池筋を北へ北浜に突き当り、淀屋橋大江橋蜆橋と 橋を三つ渡り、お初天神の西門のところに「紅う」という寿司屋の看板を目印に北へ、十三の渡し三国の渡しを越え、服部の天神さんを後にして岡町から池田へと入る頃には雪がちらついて来た。

なんとか猟師の六太夫さんの家にたどり着いた男は、新しい猪の身が欲しいと頼む。六太夫は天井にぶら下がっているおととい獲った猪を分けてやろうというが、男は新しい猪ではないとダメだとしぶとい。
六太夫はたった五百ばかりの猪の身のために猟には出られないと渋っている。すると男は、「こんな雪の日は、猟が立つ」とたまにはまともなことを言った。これを聞いた六兵衛さんが、「猟が立つとは験(げん)がいい」と猟に出てくれる運びとなった。

サンという犬を呼び、次に「イノよ、イノよ」と呼ぶと何やら黒い物が飛び出して来た。男は猪かと思ってビックリだが、六太夫の小せがれの「イノ」だった。何を話かけても「うーん」のイノに留守番を頼み、二人は猪狩りに向かった。

雪の山道を見晴らしのいい小高い所まで上り、谷を見下ろすと犬がわんわん吠えている。見ると夫婦らしい猪の2頭連れだ。メン(雌)の身の方が柔らかく美味いが、オン(雄)の方が大きい。
六太夫さんは男にどっちを撃つか聞くが、男はメンだ、いやオンだと優柔不断で決められない。最後にはもうどっちでもいいからと言って、猪の身を食べることを想像して何やかやとそばでうるさい。

いらいらしてきた六太夫さんが、引き金を引くと見事命中し猪がゴロッと倒れた。素早く山を駈け下りる六太夫に続いて、男もよたよたと後を追う。
倒れている猪を見た男、「これ新しいやろか、イノが家から古いのを持って来てすり替えたのと違うか」なんてまだ疑っている。
さすがに人のいい六太夫さんも腹が立って、鉄砲を逆手に持ち、猪の体をドン、ド〜ンと二つほど食らわした。 すると弾が当たったのではなく、気絶していただけの猪がむっくりを起き上がって、トコトコと歩き出した。
六太夫 「どぉじゃ客人、トコトコ歩いて行くほど新しい」




         

 

桂枝雀の『池田の猪買い【YouTube】


   船場・丼池ストリート 《地図

猪買いの男はここを北へ北浜に突き当り、淀屋橋〜大江橋〜蜆橋と渡り池田を目指した。
池田は『牛ほめ』に記載。
   淀屋橋 

江戸時代の豪商・淀屋がこの橋を架橋し管理したことによる名。





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