★あらすじ 家の普請をした池田のおっさんの所へ家を誉めに行けば小遣いをくれるといわれた男。早速、家を誉める文句を教わる。
「庭は縮緬漆喰(ちりめんじっくい)・・・畳は備後表の寄縁(よりへり)、天井は薩摩杉の鶉杢(うずらもく)・・・・」とても難しくて覚え切れないので紙に書いてもらう。
そして、台所の柱の節穴には、「秋葉さまのお札を張りなはれ。節穴が隠れて火の用心になる」と教わる。ここまで誉めれば小遣いの5円は下らないだろうといわれる。
ついでに牛も、「天角、地眼、一黒、直頭、耳小、歯違う」(てんかく、ちがん、いっこく、ろくとう、じしょう、はちごう) (天角はつのが天を向いている。地眼は眼が低くて地を見ている。一黒は体が黒いこと。直頭は首がまっすぐなこと。耳が小さくて歯が食い違っていること) と誉めて来いといわれ池田に出かける。
おっさんの家で書いてもらった紙を見ながらしどろもどろになりながら家を誉める。おじさんも満更でもない様子だ。段取りどおり、台所に行き柱の節穴を見つけ、秋葉さまのお札を張りなさいと言うとおじさんはすっかり感心し、2円を差し出す。5円を期待していた男、当てがはずれ5円くれなければ家に火をつけるなんて言い出す始末だ。この男なら冗談でなくやりかねないと、おっさんは5円渡す。
調子に乗った男、今度は牛をほめるというと、おっさんはそれはやめてくれという。この前、この男が来たときにお茶を持ってきた娘の前で、「力強う、色黒で、骨太で・・・」なんて牛のほめ言葉を練習したもんだから、娘は怒るやら泣くやら、今晩から牛小屋に寝るなんて言い出す騒ぎだったのだ。
男は今度は大丈夫だからと、牛の前で一生懸命誉めていると牛はぷいと後ろを向き、糞をたれ始まる。
おっさん 「兄い、堪忍したっとくれ。人間だったらこんなに誉めてもうたら礼のひとつも言わんならんところだが畜生のこっちゃ、この穴さえなかったら」
男 「おっさん、いい知恵貸そか。ここに秋葉さんのお札張って見なはれ、火除け、魔除けで第一、穴が隠れまっさ。」
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