★あらすじ 俥屋の梅吉が夜9時過ぎに高津宮のところで客待ちをしているところへ一人の紳士、産湯までやってくれという。梅吉があの辺は狐が出て怖いので勘弁してくれというと、30銭だすから産湯楼まで頼むという。30銭と聞き梅吉は客を乗せ産湯に向う。
途中、梅吉は紳士に聞かれ自分は正直がとりえで高津の4番町に住んでいることや、女房のことなどを話す。産湯の森が見えてきた所で梅吉がこの辺で降りてくれと頼むと、紳士はわしは人間ではなく、産湯の稲荷のお使いの者だという。
産湯楼の角まで来ると梅吉に、お前は正直者だから近々福を授けてやろうと言って、俥賃を払わず降りて行ってしまった。
家に帰った梅吉、女房に狐を乗せて産湯まで行き俥賃はもらっていないと言うが女房は信じない。女房が俥を見ると忘れ物がある。150円の大金だ。女房は警察へ届けようと言うが、梅吉はこれは産湯の稲荷からの授かり物だと言い、みんなで喜んでもらおうと長屋の連中を呼び酒、魚の振る舞いだ。
一方、狐になりすまして梅吉をだまし面白がっていた紳士。俥に150円忘れたことに気づく。あの金がないと商売に失敗するし、警察に届ければ乗り逃げしたことがバレてしまう。正直者の梅吉を頼りに金を返してもらおうと、高津の4番町の梅吉の家に行く。
梅吉はさっきの正一位稲荷大明神様が来たので喜んで家に入れる。紳士は折り入って願い事があるという。梅吉は赤飯と油揚は明日のことにしてりあえず今日のところはと酒を勧める。
紳士 「そない言われますともう、穴があったら入りとうございます」
梅吉 「穴があったら入りたい、めっそうな、お社を建ててお祀りをいたしますがな」
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