★あらすじ★ 常陸の笠間藩の家臣山崎平馬は、江戸勤番となったが風邪で寝込み、二、三日遅れて一人で出発する。また風邪をひかぬよう、狐皮の暖かい胴服を着込んでいる。
取手の渡しを渡ると、駕籠屋が寄って来て松戸まで八百文で行くというのに、平馬気前よく一貫文やるという。
松戸までの道中、駕籠屋が「気前が良過ぎやしねえか。お狐様でも乗っけたんじゃねか」などと話しているのが平馬の耳に入る。
いたずら心を出した平馬は胴服の尻尾を駕籠の外へ出し、狐になりすまして駕籠屋を驚かし、自分は笠間の紋三郎稲荷の眷属で、王子、真崎、九郎助の方へ参ろうと思っていると駕籠屋をだまし、途中の茶店では稲荷寿司ばかり食べている。
松戸宿の本陣の主人の伊藤惣蔵が笠間の稲荷を信仰し庭に祠まであるというので、平馬はそこへ泊まることにする。
駕籠賃を受け取った駕籠屋は、「旦那、これが木の葉に化けるなんてことは・・・」、
平馬 「たわけたことを申せ。それは野狐のすることだ」
駕籠屋が本陣の者に、平馬はお稲荷様の眷属だと告げたため、平馬はたいそうなもてなしを受ける。油揚げなんかは断り、なまず鍋、鯉こく、酒に芸者も上げての大騒ぎだ。近所の者まで平馬を拝みに来てふすまの間からお賽銭が投込まれる有様だ。
平馬はちょっとやり過ぎたと気づき、朝早くこっそり宿を抜け出す。
すると、稲荷の祠から二匹の狐がちょろちょろ出てきて、平馬の後姿をじっと見て、
狐 「へえ〜、人間は化かすのがうめえや」
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