★あらすじ 昔は本所辺りを向両国といい回向院を中心に見世物小屋が並んで賑わっていた。いんちきな小屋も多く、「世にもめずらしい目が三つで、歯が二つの怪物」が中へ入ると下駄が片っ方置いてあったり、大きな板に血糊を付けて、六尺の大イタチ(鼬)、「さあ、ベナだ、ベナだ、大ベナだ」は大きな鍋が伏せてあったり、「八間の大灯籠」が表から入ると手を引っ張られ裏口から突き出され、「表の方から裏の方へ、通ろう、とうろう」、なんてふざけたもの、赤子を食べる鬼娘なんていういかがわしい物まであった。
両国で見世物小屋を持っている香具師(やし)が諸国を巡っている六部を家に上げて、六部が旅の途中で見聞きした珍しい物や話を聞きだそうとする。その話をもとに本物を探し出し、見世物小屋に出し大儲けをしようという魂胆だ。
六部はそのような事は覚えがないというので、香具師は仕方なくお茶漬けを食べさせ帰そうとする。食べ終わった六部が、一度だけ恐ろしい目にあったことを思い出したのでお礼に置き土産に話してして行こうという。
巡礼の途中、江戸から北へおよそ120〜1,30里の大きな原の真ん中の大きな榎の所で一つ目の女の子に出くわしたという話だ。この話を聞いて喜んだ香具師は紙に書きとめ、お世辞たらたらで六部を送り出す。
香具師は早速支度をして北へ、一つ目を探しに旅立った。夜を日に継いで、大きな原にたどり着く。見ると原の真ん中に一本の大きな榎。足を早め近づくと、「おじさん おじさん」の子どもの声、
香具師 「いいものあげるから、おいで おいで」と言って、そばへ寄ってきた子どもを抱え込む。びっくりした子どもが「キャ〜」と叫ぶと、竹法螺、早鐘の音とともに、大勢が追って来る。
子どもも欲しいが命も欲しく、子どもを放りだし一目散に逃げ出したが馴れない道でつまづき、捕まってしまう。村の役人の前へ引き出され、回りを見るとが皆、一つ目。
役人 「これこれ、そのほうの生国はいずこだ、・・生まれはどこだ、なに江戸だ、子どもをかどわかしの罪は重いぞ、面を上げい・・・面を上げい!」
百姓 「この野郎、つらあげろ!」
役人 「あっ!、御同役、御同役、ごらんなさい、こいつ不思議だね、目が二つある」
役人 「調べはあとまわしだ、早速、見世物へ出せ」
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