「いつ受ける」


 
あらすじ 博打に凝ってろくに仕事もしない辰五郎が帰って来る。
女房 「こんな遅くまでどこをのたくっていやがんだい」

辰 「蛇じゃねえや、のたくってるとはなんだ」

女房 「お前みたいのと一緒にされんのは御免と蛇の方が怒るよ。どうせまた博打で取られて来たんだろ」

辰 「これから目が出るとこんなって、肝心かなめの銭がないときやがった。いくらかうちにあったら出してくれ」

女房 「馬鹿言ってんじゃないよ。おあしなんぞあるわけないだろ」

辰 「なきゃしょうがねえや、お前の着ている袷(あわせ)ちょっと貸せよ」

女房 「人の物、引っ剝いでどうすんだよ」

辰 「横丁の伊勢屋へ持ってってぶち殺すんだ」

女房 「いつ受けて返すだい」

辰 「勝負はこれからだ」

女房 「だからいつ受け返すんだよ!」

辰 「くそ、いらねえや、・・・おふくろ、その着物ちょっと貸してくれねえか」

おふくろ 「これ、どうすんだい」

辰 「質屋へ持ってってぶち殺すんだ」

おふくろ 「いつ受けて返すよ」

辰 「畜生、いつもいがみ合っているくせして、こんな時だけ腹を合わせてやがら、・・・おう、金坊、いい羽織着てんじゃねえか」

金坊 「おばあちゃんがこさえてくれたんだ」

辰 「へえ、そうかい、それお父っつぁんに貸しとくれ」

金坊 「これどうすんの?」

辰 「伊勢屋へぶち殺すんだよ」

金坊 「いつ受けて返す」

辰 「餓鬼まで同じこと言いやがって、畜生、もういいや、借りねえよ!」、頭にきて表へ飛び出した辰公、寝ている犬の尻尾を踏んじまった。「キャン、キャン!ウゥ~ワンワンワン!」

辰 「この野郎、ぶち殺すぞ!」

犬 「いつ受けて返す」



質屋へ品物を入れるのを「ぶち殺す」、質物を出すのを「受ける」という。

サゲで犬が喋る落語は『骨違い』・人間になった犬は『元犬』で喋る。


    
        






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