★あらすじ 博打に凝ってろくに仕事もしない辰五郎が帰って来る。
女房 「こんな遅くまでどこをのたくっていやがんだい」
辰 「蛇じゃねえや、のたくってるとはなんだ」
女房 「お前みたいのと一緒にされんのは御免と蛇の方が怒るよ。どうせまた博打で取られて来たんだろ」
辰 「これから目が出るとこんなって、肝心かなめの銭がないときやがった。いくらかうちにあったら出してくれ」
女房 「馬鹿言ってんじゃないよ。おあしなんぞあるわけないだろ」
辰 「なきゃしょうがねえや、お前の着ている袷(あわせ)ちょっと貸せよ」
女房 「人の物、引っ剝いでどうすんだよ」
辰 「横丁の伊勢屋へ持ってってぶち殺すんだ」
女房 「いつ受けて返すだい」
辰 「勝負はこれからだ」
女房 「だからいつ受け返すんだよ!」
辰 「くそ、いらねえや、・・・おふくろ、その着物ちょっと貸してくれねえか」
おふくろ 「これ、どうすんだい」
辰 「質屋へ持ってってぶち殺すんだ」
おふくろ 「いつ受けて返すよ」
辰 「畜生、いつもいがみ合っているくせして、こんな時だけ腹を合わせてやがら、・・・おう、金坊、いい羽織着てんじゃねえか」
金坊 「おばあちゃんがこさえてくれたんだ」
辰 「へえ、そうかい、それお父っつぁんに貸しとくれ」
金坊 「これどうすんの?」
辰 「伊勢屋へぶち殺すんだよ」
金坊 「いつ受けて返す」
辰 「餓鬼まで同じこと言いやがって、畜生、もういいや、借りねえよ!」、頭にきて表へ飛び出した辰公、寝ている犬の尻尾を踏んじまった。「キャン、キャン!ウゥ~ワンワンワン!」
辰 「この野郎、ぶち殺すぞ!」
犬 「いつ受けて返す」
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