「かぼちゃ屋」

 
あらすじ
 ちょっとお目出度い与太郎さんは、20才(はたち)になってもぶらぶらしている。
おふくろさんの頼みで八百屋のおじさんがかぼちゃを売る世話をする。「大きいのが13銭、小さいのが12銭が元値だ。売る時は上を見て売れ、客のいうことにさからわないでな」と教えれ、すっかり小商人の姿のなった与太郎は「上を見て売りゃいいんだな」と、天秤棒をかついで初商売に出た。

 与太郎さん、大通りより裏通りへ入れと言われたのを思い出し、「唐茄子屋でござい」と路地へ入ったのはよかったが、前が土蔵で袋小路で抜けられない。回ろうとするが長屋の戸に天秤棒が引っかかって回れない。「蔵をどけろ、路地を広げろ」なんてぜいたくなことを言っている。

 戸に天秤棒がガタガタとぶつかるので長屋から出てきたおっさんに、天秤棒を下して体を回せと言われやっと納得。さすが与太郎さん、面目躍如だ。おっさんに値段を聞かれて、「大きいのが13銭、小さいのが12銭」と元値を言ったのでおっさんが安いと買う。そして与太郎が上を向いているうちにおっさんは長屋の連中に全部売ってくれた。

 帰ってきた天秤棒のかごを見て八百屋のおじさんはびっくり。全部売って来た与太郎に感心し誉めるが、売上を数えると元値しかない。与太郎さんは、「上を見ているうちに全部売れた」という。おじさんは元値で売ったと聞いて、「上を見るということは掛け値をすることだ。そんなことで女房、子どもが養えるか、もう一度売って来い」と追い出す。

 与太郎さんはさっきと同じ所へ来て、さっき買ったばかりだからという長屋のおっさんにまた売りつける。おっさんは与太郎がお目出度いのが分かり、年はいくつだと聞くと、与太郎は今年60だという。
おっさん 「見た所は20才(はたち)ぐらいじゃねえか」

与太郎 「元が20で、40は掛け値だ」

おっさん 「年を掛け値するやるがあるか」

与太郎 「掛け値しなきゃ、女房子どもが養えない」

  
     前栽売り(「江戸商売図会」三谷一馬より)


柳家小さんの『かぼちゃ屋【YouTube


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