「火焔太鼓」  古今亭志ん生


 
★あらすじ★
 道具屋の甚兵衛が、市で汚い太鼓を一分で買ってくる。 店先で小僧の貞公にはたかせると、ドンドンと大きな音が出る。
駕篭で通りかかった殿様が音を聞き、大鼓を見たいという。
家来が店に入ってきて、「大鼓を屋敷に持参せよ、殿様が買い上げるかもしれない」という。

女房からあんな汚い大鼓と分かったら、ただでは帰って来れないと脅かされ、買うと言っても一分で売るように言われる。
屋敷に行き殿様に大鼓見せると気に入られる。
家来から「いくらで売るか、商人は儲かる時には儲けないといけない。手いっぱい言ってみろ。」と言われ、両手をひろげ十万両という。
三百両で買い上げられ、甚兵衛がなぜあんな汚い大鼓が三百両にもなるのかと聞くと、火焔太鼓という世の名宝だという。

急いで店へ帰ると、女房は甚兵衛が侍に追いかけられていると思い押入れに隠れろと言う。
三百両で売れた事を話し、女房の前で勘定して見せる。

甚兵衛 「儲かるだろ」 

女房 「音の出る物に限るね」 

甚兵衛 「今度は、半鐘を買って来る」 

女房 「いけないよ半鐘は、おじゃんになるから」




       



 
★見聞録★
 昭和61年にNHKラジオで放送した「語り芸の世界」から録音した噺です。むろん演じられたのは、ずっと以前です。
解説はテレビの「落語特選」でも解説をしていた劇作家の榎本滋民氏でした。
榎本氏も言うように志ん生は落語の登場人物を、はっきりとは区別されるようには話していません。
また、志ん生自身が登場人物になり切ることもないです。
志ん生の甚兵衛、志ん生の女房、志ん生の貞公、志ん生の殿様の家来です。それでも聞いていて、今が誰のセリフなのかはちゃんと分かるし、不自然さも感じさせません。
まさに、「語り芸の世界」の中の話芸の達人といえるでしょう。

この噺は志ん生以前は、小さな噺だったそうです。志ん生が工夫を凝らしここまでの噺にしたようです。
甚兵衛、女房のセリフの中に、すとんと笑わせる所が何ヶ所もあります。
無理やり笑わせるのでなく、軽く話しているようで、何ともおかしさのある芸風が今でも人気が高い由縁ではないでしょうか。

それにしても、良心的な殿様や家来です。
きたない大鼓が天下の名宝の火焔太鼓であることを、きちんと甚兵衛に話し、相応の値段で買い上げるなどは落語ならではで、後味のいいものです。

*落ちの「おじゃん」とは、「物事が中途でだめになってしまうこと。「じゃん」は鎮火を知らせる半鐘の音という」(三省堂の大辞林)


古今亭志ん生の『火焔太鼓【YouTube】




        演目表(1)へ    表紙へ    次頁へ