「軽石屁」(東の旅I)


 
あらすじ
 伊勢神宮内宮へ参拝した喜六・清八の二人連れ、大阪への帰りは東海道回りとする。
津城下の追分伊勢街道から伊勢別街道に入り、関宿の東の追分で東海道に合流した二人は鈴鹿峠から近江の水口宿を目指す道中だ。

関宿から坂下宿へ上り、そこから鈴鹿峠越えとなる。二人は峠下の茶屋で一休み。喜六はまた足が痛いとごね出す。
ちょうど茶店の向いに客待ちの駕籠が一丁、駕籠代は喜六持ちということで、喜六が駕籠代の交渉に行く。清八は「足が痛い」なんて言ったら、駕籠屋から足元を見られて高い駕籠賃を吹っかけられると注意したのに、喜六は「足が痛いから乗るわけじゃない」と手の内をさらけ出す。
代って清八が駕籠屋と応対して駕籠賃をまけさせ、自分は越後の縮緬(ちりめん)問屋の旦那で、駕籠賃はお供の喜六からもらってくれといい、駕籠に乗り込み先に行ってしまった。

やっと清八に騙されたと気づいた喜六、茶代まで払うはめになる。
茶店の婆さんから近道を聞いた喜六は痛い足を引きずりながら鈴鹿峠を越え本街道に合流し、道沿いの煮売屋で一休み。清八の乗った駕籠はまだ通っていないようだ。
清八に騙されて腹の虫がおさまらない喜六はなんとか仕返しがしたい。

田舎なので煮売屋の中はまるで荒物屋、いろんな物が並んでいる万屋(よろずや)だ。
喜六は軽石を見つけ計略を思いついた。軽石を砕いて粉にし、徳利の酒の中に入れて駕籠屋に飲ませるという寸法だ。昔から 「軽石の粉を飲むとおならが出る」言う。軽石入りの酒を飲んだ駕籠屋が担ぎだすと、がブゥブゥ出る。乗ってるやつは前と後ろから屁攻めに会って、もがき苦しむという趣向だ。
これを聞いた煮売屋のおやじも、けっこうな退屈しのぎで面白いと大乗り気。軽石のカケラが浮かないように、軽石をぬか袋に入れて一升徳利の酒に沈めるという妙案まで伝授する悪魔の使者だ。

さあ、準備万端、今や遅しと待ち構えている所へ、清八の乗った駕籠が到着だ。
喜六は手を振って駕籠を止め、駕籠屋を店に引き入れて一休みさせ、駕籠屋に軽石入りの酒を勧める。喜んだ駕籠屋は湯呑に注いだ酒を飲み始める。口の中がモロモロするが、それが上等の酒の証拠だなんて言って何杯もお代わりする。
「軽石の粉を飲むとおならが出る」という原理は、火山の爆発で出たガスが、ギュ〜と固まったものが軽石で、それが再び溶けてガスになるという、まったく無理のない理論?なのだ。

さあ、ぼちぼち出発と、駕籠屋の後棒が肩を入れると思わず、プゥ〜。先棒が旦那さんに失礼だ謝れと言って肩を入れるとプゥ〜と清八の顔へ直撃だ。
「すんません」、プゥ〜、「すんません」、プゥ〜の掛け合いで駕籠は進んでいくが、たまらないのは清八。「もう降ろしてくれ、祝儀やるから堪忍してちょうだい」と値を上げて途中下車だ。
駕籠屋は、「向こうの水口の宿まで着いてないのに祝儀まで、どうもありがとうございま(スゥ〜)」だ。
これを見て、ゲラゲラ笑っていた喜六は今のは趣向だとネタをばらす。
清八 「何でそんなしょ〜もないことすんねん?」

喜六 「元はと言えばお前が悪いのや。わしをお供扱いにするし、茶代払わすし、駕籠代払はすし。だいたい普段からお前、わしのことをちょっと 馬鹿にしてるさかい、ちょっと当て擦りでやらしてもらいました」

清八 「当て擦る? あぁ、それで軽石使こたんか」


    
                    軽石


 伊勢神宮内宮から鈴鹿峠〜東海道水口宿までの喜六・清八の道筋は、『伊勢街道D→C→B』→『伊勢別街道』→『東海道(関宿→水口宿)』に記載。



東海道坂下宿から鈴鹿峠



★桂九雀の『軽石屁【YouTube】


   関宿東の追分 《地図

喜六と清八は伊勢別街道を進み、左の伊勢神宮一の鳥居をくぐって、ここ東海道関宿に入った。
   関宿の家並み

電線のない空が広がっている。
   坂下宿

東海道五十三次の48番目の宿場。難所の鈴鹿峠を控え、参勤交代の大名行列の宿泊も多かった。かっての宿は鈴鹿峠の真下の片山神社下の谷間にあり「古町」と呼ばれている。慶安3年(1650)の大洪水で埋没し、翌年に宿全体がここに移転した。

喜六と清八が休憩した茶店はこの宿あたりだろうか。
   

灯籠坂を上って鈴鹿峠へ

灯篭が両側にずらっと並んでいると思ったらここだけ。ここは「鈴鹿流薙刀発祥の地」。

   

鈴鹿峠(378m) 《地図

松葉屋・鉄屋・伊勢屋・井筒屋・堺屋・山崎屋などの峠の茶屋で賑わっていたという。

   水口宿東見附跡 《地図

古くから東国、伊勢への道筋で、東海道の50番目の宿場町で、水口藩の城下町。

喜六、清八はもう仲直りしてこの見附を通って水口宿へ入ったか。
   

水口宿脇本陣跡(左)

「元脇本陣文右衛門」の貼り紙がしてある。この子らは脇本陣を知っているだろうか。






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