「金の大黒」

 
あらすじ 長屋の連中に家主から呼び出しが掛かる。春には『長屋の花見』でこりている連中。年の暮れだし、今度こそは店賃の催促と思って戦線恐々。一同、覚悟の上で雁首を揃えて家主の家へ行こうとしている所へ、梅さんが情報を仕入れて来た。

 子供たちが家主の普請場で砂遊びをしていた時、家主の子ども金の大黒さまを掘り出したという。目出度いことなので、長屋中で祝って大黒様お迎えしなければならないから、みんなで紋付きの羽織を着て祝いの席に来てくれとの話だ。

 長屋の連中、祝いの席でご馳走を食いたいのはやまやまだが紋付の羽織がない。持っているのは、ちゃんちゃんこ、印半纏(しるしばんてん)、褞袍(どてら)と情けない有様だ。やっと甚兵衛さんが右袖を火事場で拾い、古着屋から左袖をかっぱらった寄せ集めの羽織ならあるという。ご馳走にありつけるなら、どんな羽織でも構わないと、交代で着ることにし一同揃って家主の所へ。

 彦兵衛さんを筆頭に羽織を着回し、トンチンカンな口上を言い回し、やっと祝いの席で普段は食えないご馳走にありついた。長屋の連中は目の色を変え、がつがつと飲み食いし始めた。本物の鯛が出て、せり売りにかける奴、寿司をわざと落として、落ちたのは汚いからと全部、自分の口にほうばる奴もいる。

 そのうちに腹もふくれて、歌や踊りも飛び出すどんちゃん騒ぎとなった。すると床の間の大黒さまが、俵を担いだままこっそり表に出ようとするので、見つけた家主が、

「もし、大黒さま、あんまりうるさいから、あなたどっかへ逃げ出すんですか」

大黒 「なに、あんまり面白いから、仲間を呼んでくるんだ」


   



金大黒天(千葉県市川市大野町 本光寺


立川談志の『黄金の大黒【YouTube】


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