「伽羅(きゃら)の下駄」


 


あらすじ 豆腐屋六さんが大家から呼ばれる。店賃の催促と思いきや、大家は店を開けるのが遅いのは何故かという。六さんは毎夜、大工の源公に誘われて吉原冷やかしに行って遅くなり、朝寝坊しているのだ。大家から、「豆腐屋は朝が早いのが決まりで、豆腐が朝飯に間に合わなければ町内の連中も困る、「早起きは三文の得」とも言う。心を入れ替えなければ店立てする」と脅かされる。

 その晩は源公の誘いを断った六さん、翌朝はすっきりと早起きで、店の戸を少し開けて石臼で豆を挽いていた。そこへ紫の頭巾を被った品のいい武家が、水を飲ませてくれと言って来た。六さんは抜き井戸から冷たい水を汲み差し出すと、武家は美味そうに一気に飲み干し、お代わりした。武家はあいにく金の持ち合わせはないのでと、下駄をぬいで六さんに与え、代わりに汚い草鞋(わらじ)をはいて帰って行った。

 六さんは井戸の水じゃあ銭にはならず、「早起きなんて一文の得にもならねぇ」と、ぼやきながら朝飯を食い始めた。するとどこからかいい香りが漂って来た。土間に置いた下駄が、かまどの火にあぶられて芳香を出しているのだ。何の下駄だろうと思った六さんは大家の所へ持って行く。

 大家はこの下駄は吉原の三浦屋の高尾太夫の所に通う仙台の殿様の「伽羅の下駄」だと言う。片方でも百五十両は下だらない値打ち物という。三文の得どころか三百両もの大得ですっかり喜んだ六さん、「ゲタゲタ」と大笑いして、店に戻ってかみさんに、「伽羅の下駄で、一足で三百両だ」と話すと、

かみさん 「こんな嬉しいことはない、きゃらきゃらきゃら」

 三遊亭圓窓(真打競演)
収録:昭和61年11月


   



 高尾太夫と仙台の殿様との噺の『高尾』がある。



豆腐屋(「江戸商売図会」三谷一馬より)




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