「三夫婦」(みふうふ)
★あらすじ ある商家で夫の佐兵衛が通いの番頭で、女房のお竹が台所などを預かっている。帰り際にお竹が旦那の部屋を片付けていると、佐兵衛が手伝い始めたが、
お竹 「そのお膳は向きが違うよ。邪魔だから余計なことしないでおくれよ」
佐兵衛 「邪魔とはなんだ。折角早く一緒に帰ろうと思って手伝ってやったのに」
お竹 「あんたが手伝うともっと遅くなっちまうよ」、「何んだ、その言い草は!」で、第一次夫婦喧嘩が勃発した。
そこへ入って来た旦那、「これ、お竹、お前さんの用を亭主が助けてくれたんだ。ありがとうぐらい言うのが当たり前だろう」と、佐兵衛の援軍が現れた。
それを聞いていた旦那の女房のお重さんが、「夫婦なんだから手伝うのは当然ですよ。でも手伝うんならちゃんとやらないとかえって邪魔になりますよ。あなたもいつもあたくしの邪魔ばかりしてるじゃありませんか」
旦那 「なに!いつあたしがお前の邪魔をしたと言うんだ」と、飛び火して第二次夫婦喧嘩が始まった。そこに来たのが浜町に隠居している老夫婦で、
隠居 「何だい、いい大人が四人で大声張り上げて。店の者に恥ずかしくないのか」
旦那 「ええ、すみません。でも女どもがあまりに強情で情けのない言い様ですので、つい・・・」
隠居 「そうか、これお重、なんでお前はいつもそうとんがってばかりいるんだ、少しは引いて亭主の言うことを素直に聞きなさい」
お重 「いつあたくしがとんがりました。そうやっていつも二人であたくしを責めるのはいい加減にしてください・・・」と、またとんがった。すると、
婆さん 「そうですよ、自分の倅の言う事だけを聞いて肩持って。それじゃあ嫁があまりにも可哀相じゃありませんか。あたしも若い頃にはこの爺さんと舅にはずいぶんと泣かされてきましたよ」
隠居 「なんだ、のこのことしゃしゃり出て来やがって、この狸婆あ、黙って引っ込んでろ・・・」
婆さん 「そんなに脅したって黙りゃしませんよ。このくたばりぞこないに古狐爺い」と、第三次夫婦喧嘩は迫力がエスカレートして行く。そこに出入りの商人がやって来て仲裁に入ろうといきさつを聞く。
商人 「それじゃあ、この喧嘩の元は番頭さん夫婦のお膳の並べ方から始まったのですね。・・・それでは私はおいとまいたしましょう。こちらにお鉢が回ってくるといけませんから」
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