「昆布巻鍋」


 
あらすじ 鼻利き長兵衛の弟の又兵衛、鼻を利かせて飯時の町内を嗅ぎまわり、気に入ったおかずをもらって行く。みんな迷惑して飯時になると表の戸を閉めている有様だ。

 今日は伊勢屋では昼のおかずに鮒の昆布巻で煮ている。店をやっているので表は閉めるわけにもいかず、旦那はまた又兵衛におかずを持って行かれるのは癪でしょうがない。そこへ案の定又兵衛がやって来て、すぐに昆布巻の鍋を嗅ぎつける。

 旦那は鍋のそばに座り、「今日は店の者だけの分しか煮てない。お前にやる分はないから帰れ」とつれない返事。そんなことはない鍋の中の昆布巻の本数まで嗅ぎ分けた又兵衛だが、旦那は頑固でどうしようもなくすごすごと帰えるしかない。

 表へ出た又兵衛だが、どうしても昆布巻のあのいい香りが忘れられずに我慢ができない。何か昆布巻をせしめる方法はないかと思案する。伊勢屋の旦那は芝居と落語が好きなのに気づいて、芝居は無理だが落語で鍋の蓋を開けさせようと算段して再挑戦だ。

旦那 「何度来てもだめだよ」

又兵衛 「もう昆布巻はあきらめました。それより旦那さんとゆっくりと落語の話などをしようと思いまして・・・」、「おおそうか、それだったら上がっておくれ」ということで落語の話に夢中になる。

旦那 「へえ、おまえさん、自分でも落語ができるのか。どうだ一席やって見ちゃくれないか」とまんまと作戦に乗って来て思う壺だ。

 又兵衛 「それでは藁人形という噺を一席うかがいます。托鉢してコツコツと小金を貯め込んでいる西念・・・ある日、コツの女郎屋若松の前で女郎のおくまに呼び止められまして・・・おくまのおいしい話に乗ってしまい、西念は貯め込んだ三十両を渡してしまいます。・・・おくまから金を巻き上げられたことを知った西念は、三十両返せ!とおくまの胸倉をつかみますが、店の若い者に引きずり出され表へ放り出されて泣くにも泣けない始末。・・・家に閉じこもっている西念のところへ訪ねて来たのが伝馬町の牢に入っていた甥の甚吉で、・・・西念はおい、甚吉、そこにかかっている鍋の中を絶対に見るなよと言って座をはずしました。見るなと言われりゃ見たくなるのが人情というもの、甚吉は鍋の蓋を・・・」、旦那は身を乗り出して聞いている。

 又兵衛は鍋の蓋に手を掛け、「こうやって鍋の蓋を開けた。あった、あった、昆布巻き、まだこんなにあるじゃないですか」

旦那 「なんだせっかく話が煮詰まって、どんな落ちになるのかと思っていたのに。・・・それにしてもあんたは昆布巻にすごい執念だな」

又兵衛 「へぇ、あまり煮詰まらないうちに、もらって帰ります」



ふなんこぐい(鮒の昆布巻)
(「郷土ものがたり」)


        

682(2018・3)




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