★あらすじ 真夏の炎天下、ある村で畑仕事をしていたお百姓が倒れた。この村に医者はいないので、八里半離れた隣村へ息子が医者の先生を迎えに行く。
先生がお百姓の様子を聞くと、朝飯に昨日の残りのちしゃを食べたという。夏のちしゃは気をつけなければいけないといい、先生はお百姓の息子に薬箱を持たせ隣村へ向う。
途中まで来ると、息子が道を間違ったという。来る時は道に松の木など倒れていなかったという。見ると大きな松の木が倒れて道を塞いでいる。
実はこれはうわばみ(大蛇)だ。そばで人間の声がするので、うわばみは二人をひと飲みで呑みこんでしまう。急にあたりが真っ暗になってびっくりする二人。先生はすぐにうわばみの腹の中だと気づく。まごまごしていると頭のてっぺんから足の先まで溶けてしまう。
先生はここからの脱出方法を考える。薬箱から薬を出して下剤を調合する。うわばみに下痢をさせて、自分達も外へ脱出しようという作戦だ。百姓の息子が下剤を種蒔きのようにうわばみの腹に蒔く。しばらくすると薬が効きはじめ、うわばみは七転八倒の末、腹の中の物を大音響とともに排出した。
二人ともうわばみの尻の穴から無事に外界に戻ってきた。喜びもつかの間、百姓の息子が薬箱をうわばみの腹に忘れてきたことに気づく。
先生は百姓の息子にもう一度うわばみに呑み込んでもらって、下剤を蒔いて薬箱を取って来いというが、息子は薬の調合の仕方が分からないし、もう勘弁してくれと言い出す。
仕方なく先生は、うわばみの前へ回る。さすがのうわばみもこの暑さでへばっているところへ下痢なんかさせられて、すっかり衰弱しぐったりして目は落ちくぼみ、肩で息をしている有様だ。
医者 「うわ〜、せつない顔してるなあ。お疲れのところ気の毒じゃが、もう一辺、呑み込んでもらいたい」
うわばみ 「あぁ〜、そんな殺生な・・・もうあかん」
医者 「今度は一人だけじゃで、頼むから呑んでくれ」
うわばみ 「もうあかん・・・夏の医者は腹にさわる」
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