「二階借り」(茶漬間男)


あらすじ 亭主茶漬けを食っていると、女房のお芳が隣のお咲さんと風呂へ行ってくると言う。亭主が食べ終わってからにしろと止めるが出て行ってしまう。お芳は外で亭主の友達の辰公と待ち合わせだ。辰公は間男で二人で示し合わせて盆屋へ行って逢引する魂胆だ。だが、辰公は財布を忘れ、お芳も風呂銭しか持っていない。こうなってもあきらめないのが男と女だ。辰公はお芳の家の二階を借りようと言い出す。あきれるお芳に、辰さんはいい知恵があると言ってお芳を引っ張って行く。

 辰公は茶漬けを食っている亭主に、「近所の嫁さんといい仲になって盆屋へ行くつもりが財布を忘れたのでので二階を貸してくれ」と堂々と申し込む。茶漬けを食いながらごちゃごちゃと言っている亭主を尻目に辰公は、「近所の人やさかい、お互いに顔を知ってたら気まずい」と、勝手に電気を消してお芳と二階へ上がってしまった。

 二階で女房が浮気しているのも知らない亭主はぼやきながらまだ茶漬けを食っている。
さて二階の二人は目的を果たし、辰公は「近所同士、顔が見えたら具合が悪い」と、また電気を消して何食わぬ顔で降りて来た。お芳を外に出した辰公はまだだらだらと茶漬けを食っている亭主に、「えらい済まなんだ。近々必ず入れ合わせさしてもらうよって」とさっぱりした涼しい顔で帰ってしまった。

 そこへお芳が「ただいま」といけしゃあしゃあとして帰って来て、
お芳 「あんたいつまで茶漬け食べてんのん」

亭主 「お前が出て行くなり、辰さんが女子(おなご)連れて来て、盆屋に行く金がないから二階の部屋を貸せちゅうてな」

お芳 「嫌やでまぁ、そんなことに使われたら。前の女子はんとまだ続いてんのか?」

亭主 「あれとはもう別れて。今度は近所の人の嫁はんや言うとったで」

お芳 「まぁ〜、そんなことして、バレたらえらいことになんのに」

亭主 「何や 亭主がボ〜ッとしてるやさかい、大丈夫やとは言うてたで」

お芳 「ほな、そのご亭主は何にも知らんと今時分どないしてるやろなぁ?」

亭主 「さぁ、おおかた何も知らんと茶漬けでも食てるやろか」

西も東『紙入れ』も「知らぬは亭主ばかりなり」で恐いですね、愉快ですね。

盆屋は連れ込み宿で、襖の隙間からお盆だけ出し入れして応対したことによる。
「盆屋 京阪にてぼんや、江戸にて出会茶屋といふ。・・・・・密通の会合所なり。京阪の盆屋は揚屋、茶屋、呼屋ともに掛行燈は同じけれども、盆屋を兼ぬるものはかならず家名を大書したる肩に、かし座敷と細書あるものこれなり」(守貞謾稿


桂米朝の『茶漬間男』(二階借り)【YouTube】


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