「江戸荒物」


あらすじ 江戸が東京と代り、何でもかんでも東京の物が流行っているので、東京の荒物を売る商売を考えた上方の男。品物は安堂寺橋荒物問屋から仕入れるが江戸弁をまくしたてて、東京の荒物と思わせてしまうという魂胆だ。

 男は江戸に居たことがあるという友達から、泥縄で江戸弁を教えてもらう。客が来たら「いらっしゃい、何でも有ります」、帰る時には「どうもありがとうございました。お気に入ったらまたいらっしゃい」、笊(いかき)はザルと言い、(おうこ)が天秤棒で「ザルでもって天秤棒でもって、一貫二貫三貫、二四と四貫八百になりやす」と、威勢よく歯切れよく商売をやれと言う。

 早速、男は家に帰って店を開けると、草鞋を一足買いに客が来る。「ザルでもって天秤棒でもって一貫二貫三貫、二四と四貫八百になりやす」と馬鹿の一つ覚えで頓珍漢なことを言うので客はあきれて帰ってしまう。

 今度はほんまもんの江戸っ子が来て、二銭でタワシを三つも持って行かれてしまう。こんな調子じゃかなわんと、男は江戸弁をやめてしまおうと思った矢先に、田舎なまり丸出しの女子衆がやって来た。

男 「いらっしゃい、何でも有ります」

女子衆 「おらぁぬぅ、横町の長谷川から来よりましたんじゃがぬぅ、うち方さぁに、なぁひろはぁのつんづべなぁ のおざぁちゅ〜てやぬぅ?」で、さっぱり何のことか分からなかったが、聞くうちに横町の長谷川から来た女子衆で、七半のつるべ縄を買いに来たと分かった。だが、あいにくとつるべ縄は仕入れてなかった。

男は「何でも有ります」の反対だからと、「つるべ縄は今無います、無います」 と断ると、

女子衆 「やぁんれぇ、今からのぉ(綯う)とっては間に合わんがな」






井戸つるべ縄(「和光市歴史の玉手箱」より)



桂米朝の『江戸荒物【YouTube】

  安堂寺橋(東横堀川)《地図

西側は南船場につながり、金物問屋や砂糖商の密集する町だった。

饅頭こわい』・『東の旅@(発端)』にも登場する橋。



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