「にせ金」


 
あらすじ 士族の旦那の家へ、出入りの道具屋の金兵衛が書画の代金三円を受け取りに来る。酒好きな旦那は金兵衛に酒を勧め、二人はすっかり酔って出来上がってしまう。

旦那 「折り入ってそちに頼みたいことがあるのだが・・・」

金兵衛 「当家には先代様からのご贔屓(ひいき)をいただいております。その御恩に報いるためにはこの金兵衛たとえ命でも捨てる覚悟・・・」と、酔った上での大言壮語だ。旦那も調子に乗って、

旦那 「そうか、頼みを聞いてくれたなそなたの店を東京一にしてやるぞ」と、こっちも大ホラを吹く。

旦那 「今度、朋友が集まって珍物を持ち寄って楽しむ会をも催すことと相成った。と言うものの拙者にはそのような持ち物はない。そこで思案の末浮かんだのが・・・そなたのアレじゃ・・・」

金兵衛 「アレと申しますと・・・」

旦那 「ソレじゃ、そなたのキンだ。噂では稀代の逸物というではないか。是非とも切り取って譲ってもらいたい。明朝八時までに持ってくれば、代金五十円やる。いやなら即刻、出入り禁止だ」、すっかり酔いも醒めて、

金兵衛 「稀代の逸物なんてのはいい加減な噂でして人前で誇れるような代物では・・・」だが、もう遅い。そのうちに旦那は酔いつぶれて寝てしまった。

 翌朝、すっかり二日酔いで、昨晩のことなど何も覚えていない旦那のところへやって来て、
金兵衛、「お約束の品物を持って参りました」

旦那 「なに、飲み過ぎて覚えておらんが、わしがなにか骨董品でも頼んだのか?」

金兵衛 「なにを今さら、切って持って来いと言われた私のキンでございます。どうかお約束の五十円と引き換えにお納めください」

旦那 「なに、わしがそんなことを言ったのか。・・・それは酒の上の事とはいえ不覚だった。・・・仕方がない、わしも元は武士、二言はない。五十円はつかわそう。ただしこの事は絶対に口外するな。これは口止め料の五円だ」と言って金兵衛を追い返す。

 旦那は馬鹿なことをしたと反省しながら、気持ち悪そうに金兵衛のキンの包を開けた。すると生臭い匂いが漂い始め、猫が寄って来てじゃらついている。よく見ると蛸の頭を二つ生ゆでにして毛を刺しただけの真っ赤なにせ金玉

旦那 「あやつ、こんなもんで騙しおって、五十円誤魔化された」

 それから三日と経たないうちに、金兵衛はお召し捕りなって、「にせ金づかい」という事でで、お仕置きになった。



  


        




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