「軒付け」


 
あらすじ
 浄瑠璃に凝(こ)った男が友達の所へ遊びに行く。どれ位、腕を上げたのかと聞かれ、忠臣蔵の「五段目」だけで浄瑠璃の会に出て、すっかり上がってしまってしくじった話をする。友達は会へ出るにはもっと修行を積んでからと、人家の軒下に立って浄瑠璃を語る軒付けに連れて行ってもらえという。うまく行くと浄瑠璃の好きな家で「ウナギの茶漬け」をご馳走してくれるかも知れないと聞くと、男は早速、友達の紹介で軒付けの仲間に入る。

仲間の三味線弾きの松さんが来られなくなって、代わりに来たのが紙くず屋の天さん。師匠の所へ三味線の調子を合わせに行っていたなんて頼りない。いくつ上がったと聞くと、「テンツク、テンテン」、「トテチン、トテチン」と「チリトテチン」の3つで心もとないが、三味線がいないことには始まらない。

さあ、連中はすぐ近くの角の商家から軒付けを始めるが、誰か店先で反吐(へど)を吐いていると間違われすぐに退散。
次ぎの家では浄瑠璃を語らしてくれと頼むが、病人がいると断られ、「ウナギの茶漬け」はほど遠い。
次の家では断らずに「テンツクテンテン」から「寺子屋」の春藤玄蕃の出の所を語りに入る。家の中は静かで浄瑠璃を聞いていて、お礼の「ウナギの茶漬け」にありつけるかと思いきや、玄関に「貸家」の札。「間取りだけでも見まひょか」なんて呑気なことを言っているやつもいる。
今度の家では威勢よく、「鎌倉三代記」を語り始めると、「じゃかましいやい」と怒鳴られる。だだけもんが暴れ込んで来たと間違われたのだ。でも懲(こ)りずに「ウナギの茶漬け」はまだかと言っている男。

軒付けをあきらめた連中は、いつものように仲間内で語って、聞くことにするが、連中の家はどこも浄瑠璃禁止で、路地の奥の耳の遠い海苔屋の婆さんの家に行く。ちょうど味噌の茶漬けで昼飯の最中の婆さん、喜んで奥の座敷を貸してくれた。「朝顔日記」の大井川の段を語り始めたが「テンツク」と「トテチン」と「チリトテチン」の三味線ではうまく語れない。
すると婆さんが、「兄(あん)さん方、みな浄瑠璃がお上手じゃな」、なんて誉める。「耳が悪いのにそんな遠くから浄瑠璃の上手い下手が分かるんか」に

婆さん「最前から食べている味噌の味がちょっとも変わらんがな」


     


 
落ちの「味噌の味」は、悪声であったり調子が外れていたりする歌いぶりをあざけっていう、「糠味噌(ぬかみそ)が腐る」からです。



桂枝雀の『軒付け【YouTube




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